グルコサミンは効かないで書いたように、健康食品は規制の緩さに加え、メーカーは売らんがために、テレビという媒体を駆使して様々なイメージ戦略で消費者を洗脳しています。
「ナンチャラ学会で発表」とか「××雑誌での研究報告」などと、大学教授や有名な研究者が学会や学術雑誌にその効果を報告するケースが一般的なパターン。
すると多くの一般消費者はそのサプリメントや健康食品の効果が証明されていると思い込み、素晴らしいものだと信じてしまいます。
ですが学会での発表は、その実験の方法や結果の正しさは事前に問題にはならないのです。
基本的にその学会の会員になれば、どんなにデタラメな研究であっても発表の機会は与えられる事になっています。
たとえ学会発表で、実験内容の不備や問題点を指摘され、研究そのものがボロクソに非難されても、その議論は記録には残らないのです。
学会発表したという事実だけが残り、宣伝に利用されるわけです。
さらに日本の論文雑誌では、お金さえ払えばほとんど無審査に近い状態で掲載される学術雑誌も数多くあるのです。
相当無理した解釈であっても、大した結果が出ていなくても、体裁さえ整っていれば、まず無条件で掲載されるというわけです。
レベルの高いジャーナルの場合、正しい研究方法か、統計処理は正しいのか、結果の解釈が間違っていないか、内容が新規のものなのか、などといった点がきちんと審査されます。
しかし、超一流の学術雑誌であっても、ねつ造した研究が発表されることも少なくありません。
外見的に体裁が整っていて、辻褄が合っていれば、多くは審査を通り掲載されてしまうのです。
都合の良い点だけを強調して新しい知見であると主張すれば、審査員は認めざるをえないからです。
たとえデータを捏造していても、通常見破ることは不可能です。
研究者には良心があるから、論文を捏造するということは考えられないと思いがちですが、現実はそうではありません。
論文で発表することによって、何らかの利益を得ることができれば、論文の捏造や不正の誘惑に負けるのは、研究者もヒトですから当然出てきます。
多くの論文を発表すれば、より高いポストに着く事もできます。
さらに国からの研究費も得やすくなりますからね。
特に健康食品やサプリメントの場合は、その製品のスポンサーから金銭的なサポートが得られるという大きなメリットがあります。
健康食品の宣伝に有利な研究結果を捏造して発表し、多額の謝礼を得ている研究者は少なくありません。
例えば、インターネットで「論文捏造」で検索すると多数の「論文捏造事件」が数多く出てきます。
これの構図を、再現したかのような問題が、あのSTAP細胞論文問題でした。
国内でも、「東京大学分子細胞生物学研究所の研究室の不正論文疑惑で教授が辞任」
「東京医科歯科大の助教が論文捏造で処分」
「名古屋市立大学医学部展開医科学講座の論文捏造で准教授が懲戒解雇、教授が停職」
などといった記事が出てきます。
健康食品とは関係なく純粋に医学的な研究で論文不正が行われていた事件も多いのですが、健康食品やサプリメント絡みのものも多数明らかになっています。
【1月13日 AFP】米コネチカット大学は12日、同大所属の教授について、科学専門誌11誌に発表した赤ワインの健康効果を主張する論文に100を超えるデータの改ざん・捏造があったことが明らかになったとして、懲戒解雇したと発表した。
同大が「145か所のデータの改ざん・捏造が明らかになった」と糾弾したのは、同大医療センター外科部門に所属していたディパク・ダス(Dipak Das)教授で、同センター循環器病研究所のトップでもあった。
同大では、ダス教授の論文に不正が疑われるという匿名の通告を受け、2008年から3年をかけて同教授の論文を調査してきた。
これまでに同大は、ダス教授の論文が発表された科学専門誌11誌に書簡を送り、また同教授への連邦政府の研究費助成費89万ドル(約6800万円)の受け取りを辞退した。
1984年から同大に所属していたダス教授は、赤ワインに含まれる抗酸化物質レスベラトロールや潰したニンニクが、心臓の健康に良いとする論文を発表してきた。
レスベラトロールには消炎作用や、神経変性疾患や糖尿病に対する予防作用、心臓の健康を促進する効果などがあるとされている。
ダス教授の論文は既に数百の論文に引用されているが、ダス教授自身が投稿したことがあるのは学界でも知名度の低い学術誌ばかりで、レスベラトロール分野全体で読まれているわけではないと、米アルバート・アインシュタイン医科大学のニール・バルジライ(Nir Barzilai)氏は指摘。
科学論文撤回をめぐる動きをモニターしている「リトラクション・ウオッチ(Retraction Watch)」に対し、次のように語った。「レスベラトロールに取り組んでいる研究者は多いが、だからといって全てが解明されているわけではない。
とはいえ、ダス教授の研究を元にしては『ローマは成らない』」 (c)AFP
赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種のレスベラトロールには、優れた抗酸化作用や長寿遺伝子の活性化などの健康作用があり、心臓病や糖尿病やがんや神経変性疾患など多くの病気の予防や治療に効果が指摘されています。
日本でも、NHKスペシャル「あなたの寿命は延ばせる ?発見!長寿遺伝子」(2011年6月12日放映)やフジテレビ「発掘!あるある大事典」など多くのテレビ番組で紹介され、品切れになるほど売れているサプリメントです。
名古屋市立大学医学部の展開医科学講座のグループが、マウスを使った実験で「赤ワインに認知症予防効果がある」という論文を発表して、新聞やテレビでも紹介されて話題になりましたが、この論文も全くの捏造であったことが判り、撤回されています。
つまり、赤ワインやレスベラトロールの健康作用は誇大に評価・宣伝されている可能性があるのです。
ですがネット上では、このような論文が不正によって撤回され、間違いが訂正されず、過去の記事や情報がそのまま引用され、広まって行くわけです。
健康食品を人間の病気の予防や治療に利用するという目的で行う基礎研究が捏造されていては、人の為には全く役立っていないことになります。
実験を捏造することによって、製造メーカーに有利になるデータを提供し、その見返りとして、金銭的な利益を得る、というのは典型的なパターンです。
そしてその実績を元に製造メーカーの顧問に就任したり、リベートをもらったり、講演会などでかなりの金額を稼ぐことができます。
国内でも健康食品関連の論文の捏造は数多く明らかになっています。
フコイダンに抗ウイルス作用があると発表している琉球大学の某教授はかなりひどい論文捏造が明らかになっています。
還元水関係で論文を発表している教授にも捏造が指摘されています。
論文ではなく、体験談が全てライターの作り話であったというアガリクスの宣伝本の事件、健康食品を組み合わせた「新免疫療法」というがん治療で奏功率を過大に宣伝していた近畿大学の元教授の事件など、健康食品の宣伝には、かなりの捏造や不正があるのは常識になっています。
それは売上げを上げるという目標のためには、誇大な宣伝が必要だからです。
写真のデータを使い回ししたり、写真を反転したり一部を切り取ったりという加工は証拠が残るため不正が明らかになりやすため、数値を捏造するなどといった荒技も使われることがあります。
全く別の実験の図でも、自分の仮説に合うように作った図表でも、それが1回しか使われなければ、捏造の証拠は見つからないからです。
データを捏造してもそれを使い回さなければ不正を見破ることはまず無理です。
実際に、そのような証拠を残さない論文捏造は数多くあるはずです。
今回ご紹介した健康商品関連の論文捏造は氷山の一角です。
テレビや新聞などで、健康食品の効果が紹介されていても、鵜呑みにしないことです。
健康食品やサプリメントや民間薬や漢方薬など全てにおいて、大学教授や医師や科学者がそれらの薬効を示すデータを論文や学会で発表していても、それが真実とは限らないのです。
しかも、一般の人には、それが本当かどうかを判断することは、まず不可能なのです。
参考文献
健康食品と論文捏造から一部引用しています。
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