ガン治療のための「高圧酸素療法」
2002年に行われた日韓ワールドカップの直前に骨折したイングランドのベッカム選手は、高圧酸素療法によって、2か月で驚異的な回復を果たし、元気に本戦に出場したのです。
これは当時、大きな話題となりました。
その後、一般的に酸素カプセルと呼ばれる高気圧酸素治療装置は一部の富裕層が疲労回復や健康増進のために自宅に備えて使ったり、高額なスポーツ施設や自費医療機関などに置かれています。
疲労やケガの回復には、とても効果的だったからです。
今日のテーマは「高気圧酸素治療装置である酸素カプセルとガンの関係について」です。
医学博士の視点で書かれた、酸素カプセルに関連して、下記のような本が出版されています。
ステージVでも希望がもてるがん温熱療法+高圧酸素療法
2018年10月3日 初版第1刷 現代書林 ISBN978‐ 4‐7745‐ 1726‐ l C0047
を参考文献として使用し、一部引用させていただきます。
現在医療機関での高気圧酸素治療に対する適応症としては、脳梗塞、腸閉塞、一酸化炭素中毒などの急性疾患で、耳鼻科領域では、突発性難聴の治療に使われています。
疲労やケガの回復の原理と同じように、患部や脳に高濃度の酸素を供給することで急速な治癒・回復を期待できるからです。
医療機関では、2気圧以上に気圧を上昇させられる装置のみが高圧酸素療法として保険適用の医療に使われています。
ガン治療においては、抗ガン剤や放射線と併用する場合には、高圧酸素療法の保険適用が認められています。
OXYLIUM MEDICAL
CS60新神戸は医療機関ではないため、民生用の1.5気圧の酸素カプセル、OXYLIUM MEDICAL 1.5を 高気圧酸素治療装置として使用しています。
通常の約1.0気圧を最大1.5気圧まで加圧し、通常の酸素濃度約21%を30~35%まで上げることが可能なプロフェッショナル専用の高圧レオロジー仕様です。
ガン治療に高圧酸素療法はなぜ有効なのか?
高圧酸素療法は、ガン治療に有効であることがわかっています。
バイオマットによる温熱療法と同じように、副作用がなく、むしろ全身が元気になる治療法だからです。
医療機関で行われる高圧酸素療法は、この治療単独でガン組織の活性を抑える効果が得られますが、医療機関ではバイオマットによる温熱療法ではなく、高周波ハイパーサーミア療法で、抗ガン剤や放射線と併用され、相乗効果を示すことがわかつています。
高圧酸素療法は、体内への酸素供給量を通常より高めることで、からだの回復力を大幅にアツプする治療法です。
酸素は、それほどケガや病気の回復に重要なものなのです。
急性脳梗塞や心筋梗塞は、血管が詰まることで同様の酸素不足が局所的に起こった疾患です。
詰まった血管より先の組織は急激に酸素不足に陥り、壊死を起こします。
酸素は、血液に乗って全身をめぐります。
そのほとんどは、呼吸で取り入れた空気中の酸素が肺胞で血液中のヘモグロビン(赤血球)にくっついて運ばれるものです。
これは「結合型酸素」と呼ばれ、血液中の酸素の97%を占めています。
私たちが利用している酸素はこれだけではありません。
肺胞では、ヘモグロビンにくついている酸素以外にも、血液(の液体)自体に溶け込んでゆく酸素もわずかながらあり
ます。
これは「溶解型酸素」と呼ばれ、血液中の酸素の3%程度存在しています。
酸素や二酸化炭素が液体に溶ける量は、気圧に比例します。
気圧が高くなると溶ける量もふえます。
高原でビールをつぐと泡ばかりになるのは、気圧が低いために、ビールに溶けていた炭酸ガスがどんどん水から出て行くからです。
また、飲みかけの炭酸水の保存用として、ポンプ式に内圧を高める栓があります。
これも、水に溶けている炭酸ガスが高い気圧によつて閉じ込められる作用を利用したものです。
人間の肺でも、酸素が血液に溶ける量は、気圧が高いほど多くなります。
低気圧が来ていると調子が悪いという人がいますが、気圧が低くなるために溶解型酸素の量が少なくなるためと推測されます。
このような症状の方は、高圧酸素療法は酸素カプセルの中でただ寝ているだけで、気分が良くなります。
毛細血管の隅々にまで、溶解型酸素を届けたいのなら、高い気圧が保たれる酸素カプセル中に入り、呼吸していればよいのです。
高気圧酸素治療装置というと、酸素濃度の高い空気の充満した治療装置に入ることだと、多くの方は、誤解されているようです。
しかし実際は、治療装置の中と外の空気は同じもので、酸素量も変わることはありません。
血液中の酸素が増えるとどうなるのか?
それは、気圧が上げられると、呼吸によって血液に溶ける酸素(溶解型酸素)量が増えるからなのです。
民間療法として行われている酸素カプセルの中の圧力は、1・1〜1・5気圧です。
酸素を取り込む量は、通常の20%から30%上昇します。
酸素カプセルは空気圧が高まるため、鼓膜の「耳抜き」が必要になります。
上手にできない患者さんは、まれに耳痛、中耳炎がになる可能性があるので注意が必要です。
しかし、ほとんどのケースでは、多くの患者さんが問題なく高圧酸素療法を受けられています。
ガン細胞が増殖して大きな組織になってくると、その周辺の健康な細胞では栄養不足や酸素不足が起こってきます。
ガン組織周辺では血液循環が悪くなり、増殖するがん細胞が血液中の栄養や酸素を奪つてしまうからです。
ガン組織は、自分の組織にたくさんの血液をもたらすために、新しい血管を次々につくって自分の酸素不足だけを解消しようとします。
これに成功すれば、ガン組織自体が異常な増殖をくり返すばかりか、転移への経路も確保できることになります。
そのときにガン細胞が利用するのは、HIF11 (低酸素応答因子)と呼ばれる遺伝子のスイッチです。
HIFは健康な細胞にも存在しますが、酸素供給が通常どおりであればオンになることはありません。
しかし、酸素や栄養を貪欲に欲しがるガン細胞は、ほかの健康な細胞よりも敏感にHIFを働かせます。
ガン細胞のHIFがはたらくと、低酸素状態でもエネルギー代謝ができるようになつたり、より多くの酸素を得るために新生血管をさかんにつくらせたり、アポトーシス(細胞の自然死)に抵抗する作用が起こります。
そのため、ガンは進行を急激に早めてゆくわけです。
簡単にいえば、ガン組織が多くなると周辺が低酸素状態になり、その低酸素の環境がさらにガンの増殖・転移を促進してしまう、ということなのです。
高圧酸素療法は抗ガン剤や放射線治療の効果を高める
低酸素の環境はガン組織の異常な増殖につながるわけですから、高圧酸素療法によつて通常よりも多くの酸素を供給することで、ガンの増殖や転移を抑えられる可能性が高くなるのです。
ガンの標準治療として行われる抗ガン剤治療や放射線治療に、高圧酸素療法を加えることで、抗がん剤や放射線の有効作用が増強される、ということがゎかっています。
その目的で使われる場合には、ガン治療においても高圧酸素療法は保険適応とみなされます。
しかし、高気圧酸素治療装置を導入している病院は決して多くなく、また増えてもいないのです。
むしろ少なくなっている傾向にあるようです。
しかも、導入している病院のなかでも、ガン治療のために高圧酸素療法を行っている病院となると、ごくわずかしかありません。
このような状況なので、抗ガン剤や放射線と併用して高圧酸素療法を行ったときの効果についての報告もきわめて少ないのが現状です。
そうしたなかで貴重な研究成果を示しているのが、北九州市にある「戸畑共立病院」の医師グループです。
ガン組織に放射線を照射すると、ガン細胞が死んで縮小します。
照射した放射線がガン細胞のDNAを分断するからです。
しかし、このときガン組織が低酸素状態にあると、放射線の効果は薄らいでしまいます。
DNAを分断するときに、酸素(フリーラジカル)が必要になるからです。
つまり、放射線治療を行うときは、ガン組織に酸素がたくさんあるほうが治療効果も高まるわけです。
これは「酸素効果」と呼ばれる現象で、1950年代から知られていました。
酸素がない場合に比べて、酸素が存在する場合には、放射線の殺細胞効果は2〜3倍ほど高まるといわれています。
前述の報告によると、高圧酸素療法を行ったあと約30分間は、ガン組織内の酸素分圧が上昇し、また正常組織では速やかに減少していき、これによって高圧酸素療法による放射線治療の効果が増強されているようです。
抗ガン剤については、ほとんどのタイプが高圧酸素療法によつてより効果が上がることがわかっています。
ガンの方は、抗ガン剤投与後、速やかにバイオマットによる温熱治療法を酸素カプセル内で施行すれば、病院へ行かなくても済むのではないでしょうか。
膵ガンは病巣が低酸素状態にあることが多いため、抗ガン剤や放射線の効果も上がりにくいとされています。
つまり、抗ガン剤や放射線の効果は、ガン組織に酸素がないと上がらないのです。
このような効果が期待できる、高圧酸素療法で使用する酸素カプセル内において、バイオマットを使った温熱療法を行うとどうなるか?
推して知るべし!
高圧酸素療法によるガン治療は、副作用の心配がなく、抗ガン剤や放射線治療のようなカラダへのダメージのない、QOL (Quality of Life=生活の質)の高い毎日を過ごすことが可能になります。
しかも、それまでの医療機関との繋がりを大切にしたい場合も、高圧酸素療法は抗ガン剤や放射線治療の効果を高め、援軍となって支援してくれる、頼もしい味方でもあるのです。
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