現在の走行距離はついに4万キロを突破。
12月の末で購入から間もなく一年を迎えます。
そういえばシトロエンC6の中古を買ったときも、これくらい走っていたなあと、思い出しました。
この距離になると、その車の持っている魅力が際だって感じられるようになります。
精密な機械類も、熟してくるのでしょうか。
車を構成する多くのパーツにアタリがつき、それぞれが最高の性能を発揮できる状態になってきています。
それは、まず乗り心地に現れているようです。
アルピナD3で走り始めると、まずその乗り心地の良さに驚きます。
駐車場から横断歩道の段差を乗り越え、道路へ出た瞬間に、足回りの柔らかさを、知ることになります。
これだけの距離を走ると、路面からのあらゆる入力は、独特のイナシ方で足回りが見事に吸収していることが、際だってわかるようになります。
それぞれの速度域が持つ乗心地を悪化させる要素は、それなりにあるわけですが、その処理の巧さは実に見事です。
ケースバイケースでのイナシの組み合わせ方がモノをいうのでしょうか。
その案配はまさに絶妙。
街中で遭遇するあらゆる突き上げは、エアサスのように丸め過ぎず、アルピナ流のテイストで処理されるのです。
これがアルピナならではの味付けなのでしょうか。
しかもドライブモードセレクターをいじる必要が一切無いのは、D3の美点です。
なぜなら、あらゆる路面状態で、ノーマルがベストにチューニングされているからです。
カドをひたすら丸め込んでしまうくらいは、アルピナなら当然できるはずです。
現に最もよく売れている同じクラスのライバルであるシュトゥットガルト製のドイツ車は、このバイアスがかかった乗り心地が人気となっています。
あのブランドの乗り心地は、後席に乗る人のためにしつらえてあります。
ですがミュンヘンで作られるBMWは、バイアスの効かせ方を、違う方向へ向けています。
運転してみると、ドライバーのための車をめざしていることがよくわかります。
お互いの個性が際立つ味付けがなされているため、それぞれの車の乗り味は、メーカーの考え方が色濃く反映されています。
このあたりは、両者お互いにちゃんと分かって作っているはずです。
アルピナは、D3のために、BMWの3シリーズを一度バラして組み直しています。
乗り心地を含めた乗り味がオトナの余裕を感じさせるのは、組み込んである部品の組合わせ精度が高いのが、その一因なのではないかと睨んでいます。
レクサスはBMWを追っかけていますが、トヨタ製より安物のダンパーを使ったりするという、車好きには信じられない暴挙を平気でやるようになってきています。
最初の理想はどうしたのでしょうか。
さらに、乗り味を丸めすぎることなく、少しウットリさせてくれる乗り味もブレンドしてあります。
アルピナこれがアルピナのテイストとなっています。
これくらいの距離を走り込むと、あらゆる速度域で、こうしたことがジワジワとわかるようになってきます。
歩道のペイントを踏んでいるかどうかを、ステアリングを通じて楽しめる。
しかもこうしたレベルをアルピナ流で、さらなる高みへと、昇華させてあるのは、さすがです。
車好きの琴線に響く、ドライビングの本質的な楽しさを失っていないのは、そのうずくまったような姿形からも、窺い知ることができます。
30キロ刻みの数字が並ぶメーターで3つめあたりを超えると、乗り心地のセッティングは、高速道路での移動を主体としたものへと切り替わって行きます。
街中での軽快な挙動とは違い、直進性の高さへターゲットを絞ったかのように、高速道路を矢のように疾走します。
シトロエンC6とは違って、メーターで4つ目の目盛りを超えても微動だにしないその直進安定性は、実に見事です。
最高巡航速度は278キロ。
アルピナは、最高速ではなく、巡航できる速度を売り物にしています。
ですから速度計の目盛り7つめあたりまでの速度域での挙動は、推して知るべし。
巌のように安定しているため、長距離の高速移動は実に疲れません。
さらに加減速のGの大きさは、怒濤の大トルクによって、追い越し際の醍醐味溢れる楽しさを提供してくれます。
高速道路でも、ドライバーを全く退屈させないしつらえになっています。
目盛り7つめまでの速度域なら、踏めば強力なトルクが立ち上がり、ズワーンと前へ引き込まれるように加速します。
新東名は路面が滑らかで、しかも十分な道幅があるため、140キロに届かんという速度で流れているゾーンに遭遇することがあります。
100キロ(km/h)で走行しているときの、エンジン回転数は8速のトップギアで1500回転。
7速で1800rpm、6速だと2200rpm。
欲しい加速度に応じたギアは、アクセルの踏み加減で自由自在に操ることができます。
1500回転から、71.4キロもの最大トルクを発揮するエンジンは、高速道路が流れている速度域では、たいていは1500回転に届かないところで回っているに過ぎません。
アルピナ・スウィッチ・トロニック付きの8速スポーツ・オートマチック・トランスミッションは、スポーツモードにすると、変速ポイントを遅らせ、エンジンの高回転域まで積極的に使う設定となって、変速に要する時間も短くなります。
ちなみにD3の714キロというトルクは、「M3」どころかガソリンV8ツインターボの「M5」の680キロを凌いでいます。
もう少しで V12ツインターボの760i 、750キロに迫ろうというレベル。
しかも、重さはM5や760より遥かに軽い1660キロ。
ポルシェカレラは1665キロ。
ちなみに、ポルシェカレラのトルクはたった450キロ。
このようにD3の714キロというトルクの大きさは際立っています。
D3の馬力は350馬力。
ポルシェカレラは370 馬力。
ポルシェカレラに一歩も引けを取らない動力性能なのに、姿カタチはBMWの3シリーズ。
しかも毎日の足として便利な実用車としてもしっかり働いてくれる働き者です。
最高巡航速度が278キロで設定されているため、街中での安定した挙動は、言わずもがな。
そのうえさらに、車好きのドライバーが唸るライド感がトッピングされています。
このようにD3は、車好きには堪らない「駆け抜ける悦び」が溢れている車です。
◆フツウの4ドアセダンで使い勝手がいいサイズ。
◆ディーゼルなので、流れをリードする走りをしてもリッター10キロ。
◆0-100km/h加速は4.6秒と最新のポルシェカレラ並み。
巷の試乗記では「街中では・・なのが気になるが、さらに速度域を上げる、とそこからは・・」などというものが、ほとんどです。
こういうエクスキューズが不要になる、全速度域での乗り心地の良さは、D3の最も輝いている点ではないでしょうか。
距離を走る車好きにとっても堪らない魅力となっています。
街中での上限は、30キロ刻みの数字が並ぶ速度計ではたまに、目盛り3つめに届こうかという速度域。
停止からこの速度域までの加速感は、大トルク独特のスムースさで、あたかもワープして引き寄せられるかのように加速します。
その加速度は病みつきになるほどで、71.4キロもの怒濤の大トルクによる独特の加速度をあじわっていると、燃費のことなど忘れてしまいがちになります。
これより車体が大きい5シリーズベースのアルピナD5になると、エンジンは同じなのに、重くなってしまいます。
普段使いで使いやすいサイズのうえ、悪目立ちしない姿カタチ。
まさに実用車の鏡といっていいでしょう。
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