それをどこでどうバランスさせるのかというのは、日本では非常に難しいことなのだという点でした。
このことを、つくづく感じたのです。
弁護士の仕事は、被害を受けた人が相談する、というパターンが大半です。
私のケースのように、こうしたいのだけれど、大丈夫か?
もっと良い方法はないのか?
などといったタイプの相談経験の無い弁護士ばかりです。
その結果、目指す経営を実現させるための相談ではなく、保身のためのものが多くなるのです。
これは中小企業を含む大半の日本企業の共通点ではないでしょうか。
原発事故で、被害が拡大した最初の5日間に旧経営陣が頼ったのは弁護士でした。
事故の被害を最小限に食い止めることが最優先だったはずです。
ですがそれよりも、どうやって法的リスクを減らすか、ということの方が大事だったのです。
そのため「義務の怠慢」で、起訴されることになったのです。
彼らにとっては「想定外」のことだったのでしょう。(笑)
弁護士は法的リスクについては教えてくれます。
ですが、経営面から見てどうすればいいのかは教えてはくれません。
リスクを嫌って弁護士や専門家に回避対策を求めているうちに、経営リスクが限界に達してしまう。
それが原発事故、東芝危機、築地市場移転問題の本質なのではないでしょうか。
日本の世界的名門企業は凋落するばかりです。
世界的な新興企業が何故日本から誕生しないのか?
その背景には、こうした意外に根深い問題があるのではないでしょうか。
日本の金融庁のように、リスクを減らすことばかり考えていると、日本の経済発展に寄与するような新しい提案をすることなど、アタマになくなってしまうのです。
日本は銀行預金のように、リスクは少なく安全だけれども、魅力の無い金融商品ばかりです。
リスクはあっても、将来に夢を託せるような金融商品は皆無。
このような選択肢のなさは、国民から希望や生きるためのモチベーションを奪ってしまうのです。
規制をするのではなく、門戸を広げ、チャンスと可能性を拡大する。
こういう思考パターンを「天下り天国」の日本に期待するのは、無理な相談なのかもしれません。
経営者は「法的責任」を全うすることが仕事ではありません。
従業員や顧客に、夢を与えることができる魅力ある製品を提供することなのではないでしょうか。