今回の鎌倉行きで借りた車はあの「いつかはクラウン」という宣伝文句で有名なトヨタの看板車種クラウン。
いままで一度も乗ったことのない種類の車だが、今までにひととおり、めぼしい車種は借りたので、今回は最上級車種のクラウンを指名。
ゼロクラウンと銘打った新世代の車は果たしてどうだったのか?
走行距離は2万5千キロほどのクラウンローヤルサルーン 。
まずは運転席だが、木目パネル(石目パネル?)の造りや内装全体のフィニッシュはさすがトヨタ。
デザインも厭味のない豪華さで、インパネの装備は十分過ぎるほど。
こういう精度の高い合わせ目などの工作を見るにつけ、日本ではこういうところの作りのよさで売れるのだろうねえ。
と素直にそう思った。
トヨタは、日本のオッサンの好みというかハートをガッチリと掴んでいるようだ。(笑)
スカットルは低めで、前の視界はいいのだが、走り出して直ぐに感じたのは、フロントの4隅?というか前の角の位置がどこかがわかりにくいという点だ。
午後一時にレンタカー屋で借りたその足で、全員を乗せて八重洲にある蕎麦屋「三日月」の店先へ止めさせてもらい、蕎麦で腹ごしらえ。
しかし狭いところに停めると図体はかなりデカイ。
この車で狭い道には迷い込みたくないぞ。
ダッシュボードの操作系は、よく考えられていて使いやすい。
ただナビゲーションシステムは、ワンタッチで広域表示をさせる方法がわからず、これはちょっと不便だった。
助手席の友人もぶ厚いマニュアルを見て、やる気ナッシング状態となり、結局は読まずに使っていたのだけれどね。
マークXもそうだったが、オーディオの調整はナビの液晶画面を切り替えて使う方式。
こういう違った操作体系のものには、独立させたスイッチを割り当てたほうが使いやすいと思うのだけれど、音量ツマミだけは独立してアナログ的に操作ができるから、このオーディオシステムは、微調整をしないという前提で作られているのだろう。
オーディオの音質は、室内の静けさとあいまって、十分なレベルと言っていいと思う。
ドライバーズシートは適度なサイズで形状もよく、ちょうどよい柔らかさで座り心地とホールド性のバランスがよく、長時間座っていても腰が痛くなるということはなかった。
ランバーサポートは調整幅も大きく、各種の調整機構も完備している。
「プリウス」と同じように、インストゥルメントパネル右端にあるエンジンをかけるためのスターターボタンを押すとエンジンがかかる方式だが、ブレーキペダルを踏まないとエンジンはかからない。
3リッターのこの車はジグザグゲート付の6段AT。
変速のショックは非常に少なく、またギアの配分もいい。
というよりも何速のオートマチックかを意識することはないスムースさだといえば、その滑らかさがわかるだろうか。
Dから手前のSに入れるとシーケンシャル操作が可能になるので最初は面白くてシフトしていたが、オートマチックモードがよくできていることに加え、変速をしながらアグレッシブに走るという足回りではないからねえ。
ステアリングコラムにパドルシフトもないこともあって、結局帰路ではほとんど使わなくなった。
新設計の3GR-FSEと呼ばれる、直噴の3リッターV6の回り方はとてもスムース。
高速道路の料金所からのフルスロットルでは、トルクも均一で力強いから、多少の「うなり」は伴うものの、4人乗車でもなかなか力強い加速を見せてくれる。
BMW やポルシェのような回したときの心地よさはないが、よくできたオートマチックとあいまって、この車の性格にはとてもよくマッチしたエンジンだと思う。
リアシートは多分クラウンの一等席だろうが、フロントに比べると居住性はわずかに落ちる。
だが肝心のリアのシートベルトが締めにくいのはバツだ。
カミサンがアメリカで乗っていたBMW330Ciカブリオレの、リアシートのシートベルトはこうして比べてみると、よく考えられていたなあと思う。
こうところは、真似すればいいのにねえ。
敷居は高めで、室内はこのボディーサイズにしてはそれほど広くはないが、普通のオトナには十分なスペースがある。
肩まですっぽり納まって、適度にソフトな背面に上体を預けていると、睡魔に誘われるようで帰路でのカミサンたちは、一時熟睡していたようだ。
荷室ラゲージスペースの容量は、外から見たほど大きくはないが、日本的な基準で言えば、はゴルフセットが3名分も積めるということらしいので、まずはOKなのだろう。
リッドはパンパー高さから開くので使いやすいが、運転席からはオープナーが見つからなかったのでリモコンキーを抜いて、そのボタンで開けていた。
普通はガソリンを入れる際のスイッチのそばにあるもので、友人と二人で探し回ったが見つからず。(笑)
マニュアルを読めば書いてあるのだろう。 > マニュアルを読め > オレ(笑)
でもね、トランクには普通のノブをつけて、後部のトランク外から直接開け閉めできるようにしておいて欲しいなトヨタさん。
メーターは見やすいけど色気なし(笑)
電動パワーステアリングは、タウンスピードでは操舵力がすこし重めで、なんとなくフリクションあり。
高速走行では少し左右に振られることがあり、ビシっと矢のように突き進むといったレベルでの直進性はあまりよくない。
ステアリングはレガシイやアコードの方がシュアでいい味を出している。
ブレーキは問題なし。
ポルシェのような剛性感の高さは感じないけれど、動力性能に見合った利きを感じるのでまずは安心だ。
帰路は第三京浜を通ったので、車の減ったゾーンでフルスロットルをくれてやると、メーター読みで160キロほどに達した。
特に不安感はなかったが、やはりボディー剛性が、余り高くないのに加え、タイアもあまりいいものを履いていないようだし、この速度域になるとちょっとブレーキが心配になる。
最もよくなかった点はといえば、それは乗り心地だ。
NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の処理はかなり高いレベルなのだが、首都高速の目地段差を通過する際などに、意外と安っぽい揺れが発生し、収束の仕方も高級車らしくない挙動を示すのはちょっと興醒めだ。
鋭い目地段差のような高周波域の振動は、意外によく伝わってくる。
なんとなくシャーシーとサスペンションの間にゴムを介したような感触が付きまとい、おまけに全体のノイズレベルが低いために、何となく安っぽい共鳴音が常に聞こえてくる。
乗り心地に関しては高級車として、洗練されているとは言えない。
このあたりは、依然欧州車とは歴然とした違いがある。
路面の細かなデコボコでは常にサスペンションが細かく動き、完全にそれが吸収される前に次の動きが発生するというように、感触がよくないのだ。
微振動が伝わるたびに、ボディー剛性が低いという印象を受けるため、他の部分のせっかくの高級感が台無しになってしまう。
同じレンタカーでもアコードやレガシイの方がはるかに、しっかりしたいい乗り味だ。
さらに同じトヨタ同士で比べても、乗り味はマークXにも負けていると思う。
というわけで、自分で買いたいかというとノーサンキュー。
その原因はまずは安っぽい足回りと、さらにはそのスタイリングにある。
細部の造形を見るにつけ、明らかなベンツコンプレックスが見て取れる。
つい最近発表された新しいSクラスのデザインを見ると、さらに一気に古臭く思えてしまう。
ヘッドライトからグリルのイメージ、ルーフラインからCピラーへの造形は一昔前のベンツそのまんま。
足回りにはお金をかけずに、内装などを含めた見栄えに多少コストをかけ、トヨタにとっては儲かる車に仕立て上げたという印象だ。
やはりトヨタの利益率の高さは一時期カローラよりもよく売れたというこのクラウンに、おんぶに抱っこなのかなとも思ったが、でも日本国内での利益はトヨタ全体の利益の20%ほどしかないんだよね。
それはともかくとして、すぐに古臭くなるデザイン込みで、500万円を越える金額を払わなければならないとなると、やはり法人向けの車なのだなあと思ってしまう。
デザインは、いまだに国産車共通の最も大きな欠点で、それを象徴するのがまさにこのクラウンなのかもしれない。
デザイン全体のセンスとしては日産の方が垢抜けていると思うが、だからといって売れると限らないのが面白いところだ。
このクラスの車では絶対にドイツ車には似せないというポリシーがないと、世界には通用しないということを、トヨタは知っているはずなのにねえ。
輸出をしないからこれでいいというのなら、私に言わせれば、日本の消費者をナメているとしか言いようがない。
このスタイリングが日本のマーケットで通用しているということは、大多数のオヤジがこれくらいのマネは何とも思っていないということになるのだろうか?
まあ運転をしていれば、自分からは外側が見えないからね。
こうしたカタチの車がビジネス街をウロウロしているのを見るたびに、うんざりしているのは、私だけだろうか?
しかしこうして乗ってみて冷静によく考えてみると、500万円という値段が高いのか安いのかがよくわからない、不思議な車だ。
自動車雑誌では、ここまではっきりとは書いていないけれど、やはり広告をもらっている以上書きにくいのだろうかと、この車に乗ってみて、ふとそう思った次第。
まあ、いろんな意味でトヨタ恐るべし。
というのが結論かな。(笑)
出典
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