手数料の罠

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「投資信託の光と影」を読みましたが、具体的にはどういう風にして金融機関は儲けているのでしょうか?

日記でとりあげてください。

というご質問をいただいたので、今日は金融機関の手数料について。

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金融機関が売り出している金融商品の多くは、明確な手数料体系の通常の商取引とは程遠いことが多く、またそのカラクリがわかりにくいもの と相場は決まっている。

ある大手の証券会社が発表した2008年度中間決算の数字を見ると、個人関連業務、特に投資信託に関連する業務は、まさにドル箱 といっていい収益を上げている。

口座管理手数料という名目で預かり残高に対して常に数パーセントの割合で発生するこの手数料の収益は、積もり積もればバカにできない金額となるわけだ。

   

投資信託が株式、債券を売買するとき、当然のことながら主にグループ会社内の市場営業部門に対して発注する。

しかも個人投資家の売買と比べると、投資信託の売買単位は桁違いだ。

株式のように簡単で単純な取引では競争が激しく、また新規参入が容易という事情もあって競争が激化し、今では手数料を安くしなければ生き残れなくなってしまっている。

   

だがグループ内企業からの発注であれば、競争はないに等しいわけだ。

専門のネット証券参入などで、株式委託手数料自体は減少しているが、投資信託の手数料部門は、いまだにその減少を十分補って余りある利益を捻り出すことができるのだ。

つまり投資信託の売れ行きというのは、証券各社にとっての生命線で、社の明暗を分けることにもなっているというのが現状なのだ。

  

新生銀行はインターネットを利用する預金残高2000万円以上の顧客に対しては、他行あて振込手数料を10回まで実質無料と いうサービスを開始した。

さらに顧客は預金と同じように、投資信託や仕組預金、外貨預金などの残高に応じても振込手数料無料の恩恵を受けられるわけだが、残高は預金のそれよりもはるかに小額の300万円以上 という条件がついている。

  

預金2000万円以上の顧客から得る収益と、投資信託などのリスク商品300万円から得る収益は等しい条件ということは、リスク商品を購入すればするほど、預金 に比べ、相対的に高い手数料を支払うことになる。

WEBサイトを見ると、2008年1月31日まで「投資信託申込手数料キャッシュバックキャンペーン」として、手数料の10%から50%をキャッシュバックするという。

  

これを裏返して見れば、手数料収入がいかに「おいしい」かがよくわかるはず。

   

このように投資信託は平成10年以後銀行の窓口でも販売できるようになったわけだが、販売シェアは拡大し続ける一方だ。

というのは、先の新生銀行の例のように、リスク商品は売れば売るほど、手数料収入が転がり込んでくる仕組みになっているからだ。

 

だが銀行と証券会社の間での手数料競争が進めば、いずれ投資信託も今ほどおいしい商品とはならなくなるわけで、すでにノーロードという乗り換え時の手数料無料制度 や、一部では手数料緩和の動きがすでに始まっている。

そこで高い手数料を得られるという「うま味」の味を占めた金融機関が次に考えたのは、さらに儲かる商品についてだ。

その筆頭が「仕組債」と呼ばれる金融商品だ。

  

個人取引としてはあまり馴染みがない名称だが、法人向けの大口取引の商品としては、その歴史が比較的長い商品だ。

仕組債というのは主に特定企業の株価を対象に特約条件をつけた債券のこと。

ある会社の株価が何円以上であれば利回り何%、それ以下なら株で償還されるというものだ。

  

だがその株の価格が下がった時に、株で償還するということは、その株式自体は不利な条件になっているということになる。

このようなダウントレンド状態の株を持たされるというリスクを負った対価を、一部部を債券の利子にまわして利回りをアップさせた商品が「仕組債 」なのだ。

では、何故この仕組債が大きな手数料を生むのだろうか。

  

それはできるだけリスクの大きさを高めたものを、販売するからだ。

なぜならリスクが大きくなることで、受け取るプレミアムという対価が高いものになるからだ。

つまりこのプレミアムを全て利子に回さず、証券会社が手数料として受け取るため、リスクが高い方が儲かるのだ。

  

つまりリスクに見合ったリターンを顧客に還元せず、途中で金融機関が「抜く」ことによって、大きな収益を発生させる商品が「仕組債 」と呼ばれる商品の実態なのだ。

三菱UFJ証券は昨年末、グループ企業で日本の銀行最大手・三菱UFJ銀行の顧客を対象に仕組債の販売を開始している。

みずほ証券もJPモルガンと提携し、日経225指数とドル円相場を連動させた仕組債を開発し、 指数と為替を組み合わせた 「個人向け仕組債」を販売している。

  

銀行は銀行で「仕組預金」などという、仕組債と同様の効果を持つ預金商品の販売を開始。

肥後銀行はみずほ証券と業務提携し、平成18年6月、証券仲介業に係る仕組債の販売を開始している。

このように、すでに仕組債や仕組預金の販売は現実に行われているのだ。

   

いずれ仕組債は投資信託と同じように、ポピュラーになってゆくかもしれないが、それはひとえに「個人顧客の無知さ加減」にかかっているといってもいいだろう。

株価が一定水準以上であれば何%かの利回りが得られ、ダメでも株が残るからというハナシを「おいしく感じる」人は、目先の利回りにつられると、本来 持っているリスクが認識できないタイプといえるだろう。

株価が 一定水準以下になった、いわゆるダウントレンドの株を持ち続ければ、大きな損失だけが待ちかまえているという大きなリスクを、銀行しか利用したことのない顧客が認識できるだろうか?

  

もし仮にリスクを認識できたとしても、目先の利益につられて、目をつぶってしまうことも十分に考えられるわけだ。

しかも顧客の無知につけ込んで巨額の手数料を貧る仕組みを考えた、金融機関側の責任が問われることはないのだ。

だがよく考えてみれば、取れるところから搾り取るという発想で個人マーケットを痛めつければ、やがては市場が先細り、金融機関側も、結局は自分たちの首を絞め ることになるわけだ。

 

そう考えると、目先の利益に目がくらんで、市場先細りのリスクを認識できないという意味では、顧客以上かも知れない。

 

というわけで、顧客であれ金融機関であれ、目先の欲に目がくらむと、その結末は同じ事になるというオチで、最後を締めたいと思います。(笑)

 

 

出典 

   

2008年1月22日

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