Life's Little Instruction Book という本があります。
直訳すると、「人生の指南書」ということになるでしょうか。
10年ほど前に初めて渡米し、シアトルに住んでいるとき、向こうの本屋で見つけたのですが、もちろん英語で書かれています。
渡米したときは、英語はほとんどダメだったので、難しい長い英文は読みたくない気分だったのですが、この小冊子なら何とかなるかなと、買ってみたのです。
1ページがだいたい11センチ×15センチの大きさで、左右2ページ見開きですが、1ページ分が成人男性の手のひら大といえばイメージできると思います。
1ページ目の最初の言葉は 1・Compliment three people every day
辞書で、Compliment を調べると、敬意・ほめことば・お世辞・愛想・儀礼的な挨拶・辞令・祝辞・お悔やみという言葉が並んでいます。
難しい言葉はこのように辞書を引くことで、少しずつ覚えることができます。
この例では「毎日3人の人を誉めましょう」あるいは「挨拶をしましょう」ということにな るでしょうか。
できることを「心がける」というきっかけになるようなことで、実行するのがそれほど難しくないことが、並べられています。
もちろんこれは、アメリカ人が書いたものですから、アメリカの習慣を知らないと、よく意味がわからなかったりすることがあるのですが、そういうのは飛ばして、わかるものだけを、頭の片隅に入れておけばいい、と気楽な気分でパラパラと読んでいました。
この本のいいところは、サイズが小さくて、ワンフレーズが短いので、わからない単語がひとつくらいなら、辞書を引いてみようという気になるという点です。
2番目は、2・Have a Dog 「犬を飼おう」というものです。
これは庭がないとダメとか、散歩が面倒さいとかの理由で、簡単には実行できないかもしれませんが、ウチは庭が広かったので、ジェナという名前のゴールデンレトリバーを飼っていました。
庭が広いので、勝手に走り回っていたため、散歩に連れてゆく必要もなかったのですけどね。
子供たちはとても喜び、家族の一員として、日本へ帰るまで10年近く飼っていました。
でもそんなに広い庭の家は日本にはありませんから、アメリカ人で庭の広いところに住んでいる人を探して引き取ってもらったほうが幸せだろうということで、引き取ってくれる人を探しました。
血統書のあるいい犬でしたから、すぐに引き取り手はあらわれたのですが、しばらくすると、その引き取った人たちを威嚇するんですね。
そして飼い主があきらめたら、私たちのもとへ戻れるだろうと、考えたのでしょう。
そうやって、ジェナの作戦は成功し、二度ほど戻ってきたのです。
でもどう考えてもそんなに広い庭の家は日本にはありませんから、やはり引き取ってもらうことにしたのです。
3人目の時でしたが、しばらくして様子を尋ねに電話をすると、絶対に来ないでくれって言うんですね。
我々の顔を見ると、また帰りたくなって、引き取られたところに落ち着かないことになってしまうというわけです。
なかなかしっかりとした考えの人だから、この人なら大事にしてくれるだろうと、我々もこの言葉を聞いてちょっと安心したと、いう想い出があります。
でも長年飼っていると、寂しいもので、その代わりといってはなんですが、猫を2匹飼うことにしたのですけどね。
今でも時々、娘は「ジェナ公は今頃どうしてるかな・・」と遠い目で思い出すことがあるようです。
この本は英語の勉強もできますし、アメリカという社会を知ることもできるので、手元の見えるところにおいておいて、気が向いたらパラパラとめくって読んでいました。
私はトイレにも、もう一冊置いていましたけどね。^^
この本が出版されたいきさつですが、テネシーのナッシュビルに住む、Brown,H.Jackson という人が Adam という息子さんが家を出て大学へ入るとき、自分でタイプしたものをバインダーで閉じて持たせたのです。
息子はある日父親へ電話をかけ「ずっと読んでいるけど、これは今までで最高のプレゼントだと思う。自分でいくつかを書き加えたものを自分の息子にも持たせたい」と伝えたそうです。
こうしたいきさつが発端で本になったそうなのですが、出版されるやいなやニューヨークタイムズ・ベスト・セラー・リスト上で2年以上に渡って、それもペーパーバックとハードカバー・フォーマットの両方で一位を続けたのです。
このように多くのアメリカ人の支持を受けた「小さな本」は、LIVE AND LEARN AND PASS IT ONはLIFE'S LITTLE INSTRUCTION BOOKと続き、さらにニューヨークタイムズ・ベスト・セラー・リストへ28週間に渡って掲載されるという、ベストセラーになりました。
その後、彼の33冊の本は35の言語に翻訳され、現時も世界中の何百万という人に愛読されています。
彼の多くの著作の発端となったこの本は、アメリカで確か7ドルほどでした。
日本でも紀伊国屋へ行けば1000円ほどで売っていると思います。
出典
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