毎日のマーケットでシミュレーションなどを通じてトレーニングをする。
このことが、いわゆる一般的な会社勤めの「普段の仕事」と、どこがどう違うのか?
この違いを理解している人は、意外に少ないのではないでしょうか。
今回は、いただいた、ご質問への答えとして、書いてみました。
一般的に会社という組織で働いてきた人というのは・・
与えられた仕事をきちんとこなすのが最も大事。
できるだけミスをしないようにするため、大きな失敗の経験はない。
自らがリーダーとなり新規プロジェクトに携わるというリスクを乗り越えた経験はない。
仕事の内容は、基本的に先輩が担当していたものを引き継いでいる。
仕事のやり方について、外部へ説明したり頼まれることはまずない。
今の仕事以外に、新たに手掛けたいことがあっても、そういう気力も時間もない。
今いる会社や部署を辞めても、自分だけの力では稼げない。
一方でトレーディングである程度の成績を残せる人は・・
トレードを通じて、失敗したり成功したりという経験は豊富にある。
ミスをして大きなロスを出した経験もある。
マーケットは毎日が違うため、毎日のトレードというのは、新規プロジェクトをこなすことと同じ体験となっている。
仕事は、自分なりの手法に加え、様々な工夫をしている。
ブログで毎日の仕事について自ら分析し、第三者へわかりやすく説明し、さらに改善の方法も公開している。
昼間の時間が十分にあるので、やる気さえあれば、新たに手がけたいことがいくらでもできる。
今後は更に実績を積み上げる事ができるため、毎日が楽しい。
これだけの違いがあるわけです。
トレーディングのセミナーへ参加される方は、会社という組織で少なくとも10年は経験を積まれています。
ですが、上記のように、会社という組織で働いてきても、その経験はほとんど役に立たないのがトレーディングなのです。
ですが、トレーディングで必要なことや、大事なことというのは・・
自らがリーダーシップを取らなければならない。
時間とゲインという生産性を意識せざるを得ない。
その日のマーケットの動きに対して臨機応変に対応できる柔軟性が必要。
マーケットでの大きな変化やミスを真摯に受け止め、自分のアタマで考えたうえで、対処できなければならない。
このように、トレーディングは、専門職としてのいわゆるプロフェッショナルなスキルが非常に重要な仕事なのです。
今までの仕事で、こうした専門的なスキルを身につけられた人というのは、トレードという仕事でも、同じように専門性を身につけることができるでしょう。
ですがそういう人は、どれくらいの割合なのでしょうか?
たぶん10人に一人くらいでしょう。
これだけ割合が低いのは、結果の評価方法が、会社という組織と、トレーディングの世界とでは全く違っているからです。
会社だと、仕事の評価は多くの場合、上役によって決定されます。
まれに売り上げという具体的な数値が使われることもありますが、それはセールスなどの専門性のある分野に限られています。
そしてその数字も、その会社が持つブランドの力が大きく作用するため、個人の裁量がどれくらいなのかがわかりにくいのです。
それよりも、年功序列や先輩後輩というエラルキーや、業界での序列などの「大人の事情」によって、評価が大きく変わることの方が多いのです。
トレーディングと違って、事実と論理に基づいた思考での結果より、こうした人間関係の方が遙かに重視されるのです。
このような背景があるため、セミナーでトレーニングの方法を具体的に説明し、やるべき事を列挙しても、それが出来る人というのは非常に少ないのです。
マーケットでのシミュレーショントレードというのは、何十年もやったことがない全く新しいプロジェクトに、毎日取り組むようなものなのです。
ですからある程度時間がかかるのです。
おまけに、そうした過程を監視し、プレッシャーをかける上役の目が全くないとなれば、いくらでも手抜きはできるわけです。
それでも、文句を言われることは、一切ないのですから。
そうなると、自分の評価に対し甘くなりやすくなるのは当然のこと。
ですが損益という数字は、冷徹にミスやルール違反の頻度と比例した結果を突きつけてくるのです。
自分に対して甘い人は、ある時期から特有の信号というか症状が現れ始めます。
それはまず、ブログの更新が途絶えはじめるという症状です。
そして添付チャートは手抜きされたものとなってゆきます。
結果として、何故そのチャートが掲載されているのかが第三者には分からない状態に陥ってしまうのです。
そうなると客観的な原因の究明などできなくなるのは、当然のこと。
じゃあ、明日のトレードから、この点を試して見みて、それを10日間続けよう。
などという、絶対に必要となる結論など、どこを探しても見つからない状態になるのです。
そしてブログの更新は気の向いたときだけ。
そしてやがてフェードアウト。
チャートと同じ典型的なフォーメーションといっていいでしょう。
Trader's Blog を見れば、多くのサンプルが見つかるはずです。
成功した人は、さっさといなくなりますしね。(笑)
10人に一人いるかどうか、というのは当たらずとも遠からず。
さてここまで書いたものを読んで、一念奮起できるだけの情熱とモチベーションを発揮できる人というのは、さてどれくらいいるでしょうか?
楽しみです。