基本的に現在の企業というのは、限られたマーケットを奪い合う、ゼロサムゲームタイプのビジネスモデル。
マーケットのサイズが大きく成長を続けている間はいいが、いつかは成長が止まるわけだ。
その時期はモノによるが、ある意味で時間の問題。
企業が成長できる寿命は長くても30年といわれるのは、こうした側面があるからだろう。
代表的な日本企業であるシャープは、泥臭くグレーな競争戦略に翻弄され、今のような状況に追い込まれてしまった。
こうした競争戦略を実践してきたメーカーの代表は韓国のサムスン。
様々な方法で集めた他社動向の情報を使った「ライバルの裏を掻く」戦略合戦で、競合企業を追い詰める。
こうした類の「したたかさ」が、今の企業に求められるという時代になってきたわけだ。
コンサルタントによると、こうした情報収集をしている形跡は、日本企業からは全く感じられないという。
他社に対する関心が薄いのか?
自前主義の技術への驕りなのか?
あるいはもともとのムラ社会的内向き日本人体質なのか?
いずれにしても生き馬の目を抜くような競争対応は、取れない、あるいは取りたくないという体質が、日本企業にはあるようだ。
eコマースしかり。
書籍販売でスタートしたアマゾンは、今や何でも売っている。
アマゾンの eコマースを利用すれば、妊娠や遺伝子検査キットから、墓石や葬儀、お坊さんの手配まで何でもできるのだ。
まさに揺り籠から墓場まで。
これだけ商品ラインナップが揃うと、それまでの小売店や業態店といった区割りが破壊されてしまうことになる。
面白いことに、スマホのリーダー・アップルやグーグルと、eコマースの雄アマゾンはお互いに最大のライバルと意識しているようだ。
これから将来、情報革命がどんな変化を起すかの予測はつかない。
だが情報革命がますます進むことだけは間違いないだろう。
構造的な地殻変動が起こっている時代に、内向きのムラ社会に生きてきた日本企業が、血なまぐさい熾烈な戦場を騎馬民族のように勇猛果敢に駆け抜けてゆけるだろうか。
この記事の筆者は、世代が変わったくらいでは、日本は変わらないという気さえするという。
一部の蛮勇の創業経営者を除き、日本人が策略的競争戦略に勝ち抜ける気質を持たないとしたら、これからどうすればいいのか?
生きる道は農耕民族の強さで押してゆく道だという。
電機業界は「重厚長大複雑業界」で勝負すべきだというのだ。
具体的にその強さとは何か?
キーワードは「地道な改善努力」
「誠実な顧客志向と品質の作り込み」
そして「内外のチームワーク」。
さらに「日本の強みが生きる業界の選択」だという。
それは例えば日立が選んだインフラ事業
パナソニックが選択した住宅や自動車会社向け事業
ソニーが成功させてきたエンタテインメントや一部の金融事業だ。
筆者はそれらの業界を「重厚長大複雑業界」と取り敢えず呼んでいる。
ライバルたちが「独裁的リーダーシップ」
「スピーディーな意思決定」
「策略を駆使した諜報戦」
「短期間でコピー可能な製品やソフト」
「バリューチェーンが自由に組み換え可能な事業環境」
といったキーワードで戦いを仕掛けてくるなら、日本企業はそれらの要素が効かないビジネスや業界を見つけなければならない、ということになる。
例えばインフラ事業は「長期間かかるスローなビジネス」であり、「顧客と粘り強くコラボしながら進める開発プロセス」が必要になる。
「夥しい数の下請け企業を巻き込みコンセンサス型でリードしていく事業」ともいえるだろう。
さらに「売った後もメンテなどで顧客と長い付き合いとなる事業」なのだ。
日本人は「コツコツ努力」
「策略ではなく誠実さ」
「長い付き合い」
「顧客や下請けを含めてチームワーク」
などが得意。
つまりは、この体質にマッチするのがインフラ事業であり、日本企業が成功している事業なのだという。
こういうプロセスを新興国のライバルがコピーしようとしても、EMSがあるわけではなく模倣には極めて長い時間がかかることになる。
独裁的リーダーシップでスピーディーに引っ張ろうとしても土台、ヒトや技術が付いてゆくことができないからだ。
とはいえ、これは会社という組織同士のハナシ。
これから起業しようとする人には、反面教師としての面からしか、参考にならないだろうけどね。
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