たとえば自分が幸せかどうかは、他人よりも暮らし向きが良いと感じられているかどうかで判断されることが多い。
ある研究によると、稼ぎが少なくても、多くの人は自分が同僚よりも多く稼いでいると思っているそうだ。
仕事の成果についても然り。
他の人と同じかそれより良い場合に、それが成功していると見なすわけだ。
だが、ここには大きな問題が潜んでいる。
なぜなら、私たちがこのように比べるのは、自分の内面と他人の外面なのだという点だ。
いわば、全く違ったもの同士を比較しているのだ。
たとえば素晴らしいプレゼンテーションをしている人も内心は、出番を待っているような気分でいるのかも知れない。
心の中は乱れてパニック状態にあっても、それは他人からは、決して窺い知ることはできない。
仮に本当に彼が優れているのなら、内心ではパニック状態にあってもおかしくないのだ。
研究によると、人はより優秀になるほど、「インポスター症候群」と呼ばれる症状が悪化する可能性が高くなることが明らかになっている。
より多くの実績を上げれば上げるほど、より優秀な人と肩を並べるようになるわけだ。
そのため、まわりのより優秀な人と自分を比較し、だんだんと自分はできが悪いと思い始めるのだという。
一方で、生まれつき才能がない人ほど、自分の出来が悪いなどとは思わないことが多い。
なぜなら、そのように考えることができるほど、有能ではないからだ。
これは「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれている。
つまり、「自分には能力がないのではないか?」と不安になる人は、その能力を持っている証拠なのかもしれないのだ。
本当のところ、私たちは皆、何とかやり過ごしているに過ぎないと心の中で感じていることが多いのではないだろうか。
このように人のことを気にし過ぎると、本来自分が持っている「よさ」が発揮されないことに繋がるかも知れないのだ。
このように人のことを気にしている暇があったら、自分のよい素質を伸ばすことについて、考えた方がいいのではないだろうか。
自分のよいところは「どこ」なのか?
分からなければ、伴侶や恋人に訊ねてみるのも手だ。
人は人、自分は自分と、我が道を真っ直ぐ見据えて人生を歩める人。
こういう人こそが、本当に幸せな人生を生きている、と言えるのではないだろうか?