タカタベルトのリコール問題でクローズアップされた車の不具合。
フィットの不具合連発を招いたホンダの内情 独特な組織体制に潜んでいた弱点
こちらにも記事があるが、DCTを巡っては、昨年10月、12月にすでに2度のリコールを行い、記事で取りあげられているのは3回目のリコール。
過去2回とも今回とはトラブルの状況と原因は異なるが、いずれもDCTの制御プログラムにかかわる部分が原因となっている。
今回、十分な対応ができなかったのは何故か?
背景には、DCTを使ったHVシステムがホンダにとってこれまでに経験がないまったく新しい複雑なシステムだったことが挙げられるだろう。
CVTのクルマって、乗ってて楽しくないものが多い。
回転数がレッドゾーンまで届いたら、そのまま一定でシフトアップなし。
スポーティーじゃないし、車の運転好きにとっては全く面白くない変速システムだといっていいだろう。
数年前に、自動車メーカーが、設備投資の対象として、デュアル・クラッチかDVTか?
という二択をしなければならなくなったときがある。
そこで日本車メーカーは、CVTに開発投資を集中してしまった。
CVTとDCT(デュアル・クラッチ)は、トランスミッションの性格としては全く逆のトランスミッションだ。
CVTはエンジン回転数をできるだけ一定にしたままで、速度を無段階に変速比を変えることで制御している。
一方でDCT(デュアル・クラッチ)はギヤの切り替えが必要のため、シフトチェンジではエンジン回転数とDCT入力回転数を合わせる必要があるわけだ。
今迄の日本車メーカーは、CVTばかりだったため、エンジン回転数を一定にする目的の技術は培われてきた。
だが、DCTではエンジン回転数変動に強いエンジンを開発する必要がある。
言ってみれば、最近のCVTは、トルクコンバーターを搭載することで、クラッチ制御からも逃げているのだ。
つまり「事なかれ的CVT」を、高度なブリッピング技術が必要なDCTへ進化させるのは、簡単な事ではないのだ。
日本勢のDCTは、欧州のDCTよりもトラブルが多い。
極端な物言いをすれば、日本車がクソだったのはDCTの有無ではなく、燃費しか考えないドライバビリティの欠如したCVTしか用意できなかった点にあるわけだ。
CVTの加速は、エンジン回転数一定でギア比だけが変わってゆく。
エンジン出力も一定で、速度上昇に伴い、加速だけがダラダラと鈍ってゆくという特性だ。
そこを何とかしようと、最近登場したのが、「クロスレシオ8段手動変速モード付CVT」などというシロモノ。
このように、ホンダのリコール問題は、CVTに一点張りしてしまった日本のメーカー の現状が如実に反映された問題でもあるわけだ。
一方で、フォルクスワーゲンやポルシェなどの欧州勢はツインクラッチや多段トルコンATを下位セグメントまで積極展開している。
こうした変速機に比べ、ドライバビリティーという運転の楽しさから言えば、CVTはそもそも本質的に圧倒的に不利な条件となっているわけだ。
そのCVTの宿命的弱点のひとつは、反する仕事をしなければならいという宿命にある。
プーリーとベルトの接触面を潤滑させながら、なおかつ滑って駆動力が抜けないように、両者押しつけておかなければならない。
それには高い油圧が必要になり、この高い圧を発生させるため、オイルポンプ駆動損失がかなり大きくなる。
時にはエンジン馬力の5%をも食ってしまうというこの損失が、無段変速できることによるエンジン馬力の有効活用効果を上回ってしまうわけだ。
結果として燃費が悪くなることが往々にして見られるというわけだ。
だが、事実上CVTしか知らない日本の保守層だけを相手にしている限り、このうした問題は露呈しにくいのが現実。
新たな大規模投資の要らないCVTに安住しているがゆえに起こった、ホンダのリコール問題。
だが、果たしてこれでいいのだろうか。
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