在宅勤務という形態に変えてから、今年で何年になるだろう。
アメリカで仕事がなくなって以来だが、気がつくとあれからもう20年。
今の日本でこういう形態で仕事をしている人の割合って、どれくらいなのだろう?
私の場合高層マンションの上層階に自宅、低層階に在宅勤務用の書斎兼オフィスを構えている。
だが一口に在宅勤務といっても、誰にでもできるというものではない。
なぜなら、在宅勤務を成功させるためには、下記のような、いくつかの条件があるからだ。
自発性の維持
1人での作業というのは、外部からの刺激や動機付けを受けることができない、というデメリットを潜在的に持っている。
在宅勤務では、そのデメリットを跳ね返し、一定の成果を出さなければならない。
そのためには、基本的に常に新しいアイデアを求め、自分の行動の結果に対して責任があるわけだ。
いわゆる、強い信念(起業家精神)と行動力が、常に問われることになる。
コミュニケーション能力
これは在宅勤務であろうと、そうでなかろうと、就労環境を問わない能力でもある。
特に在宅ワーカーにとっては、絶対的に不可欠なもの。
なぜならほとんどのコミュニケーションが電話かメールで行われるからだ。
そのため、自分の考えを明確に、そして簡潔に、必要とされる相手に伝達する必要がある。
このような非対面コミュニケーションでは、しぐさや表情などのサインは使えない。
そのため写真や文章力を駆使し、自分の意図するところをメッセージとして、確実に相手へ伝える。
もちろん必要に応じて、面談での高いコミュニケーション能力も当然必要になる。
さらにもし何かの不満があっても、誰かにその不満を伝えてガス抜きをする、などということもできない。
しかもその不満は、自分で解決しなければならない。
だがその対策は、意外に簡単だ。
不満に思う考え方をしない。
これに尽きる。
相手に対して期待し過ぎず、成果は8割方達成できれば、十分だと満足できれば、不満など起こらないわけだ。
在宅勤務では、その責任は全て自分が引き受けなければならない。
しかも問題や課題に直面しても、同僚や上司からのアイデアやアドバイスを受けることはできない。
自分自身の力だけで、問題となる原因を見つけ、的確に対応し、問題を解決することができるだろうか?
だが面倒に思わず、最低限のリサーチさえしておけば、危機的な状況に遭遇することは、まずないと言っていいだろう。
もちろんある程度の自己批判的な思考は必要だ。
それが備わっているかどうかは、一ヶ月後の入金と出金とのバランスを見れば、一目瞭然。
テクノロジー
在宅勤務では、いわゆる IT部門 に相当するセクションは重要な意味を持っている。
なぜなら、PCの不調や、ハードディスクのクラッシュなどに対して、全て自分で対応しなければならないからだ。
自分だけのチカラでPC、ネットワークやメールに関する問題のトラブルに対応できない場合は、どうすればいいのか?
外部スタッフと契約する。
これが最も現実的でリーズナブルな方法だ。
初期段階でのセッティングさえ済めば、そのあとでトラブルが頻発する恐れはかなり少ないのだ。
そのためには、スカイプなど、最低限のハイテクツールは、必要に応じて使いこなすことができなければならない。
自己評価能力
在宅勤務における最大の問題点は、外部からのフィードバックがないという点だ。
仕事のパートナー、あるいは協力してくれるスタッフには、平均以上のコミュニケーション能力が必要だ。
フィードバックを受けるためにはある程度のレベルのスキルがなければ、はまず無理だろう。
さらに、自分の仕事ぶりを、自発的に、そして客観敵に評価できる能力が必要になる。
自分の業務を批判的な目で評価できるだろうか?
私の場合、対策として必要に応じて弁護士や税理士と定期的に面談し、問題点を指摘してもらうようにしている。
特に税に関するプロフェッショナルからの意見は非常に重要だ。
生産性
自分の仕事自体が、少しでもよりよくなる方法を、常に模索するという姿勢。
こうした点を維持するためには、ある一定のモチベーションを持続することができなければならない。
そのためには、自分の体調管理などは当たり前にできなければならない。
常にに肉体的、精神的に高い水準のコンディションを維持するため、まず食べるものをしっかり選ぶことだ。
そして血液の状態に留意し、循環器が正常にさえ動いていれば、まず大きな病気にはかかることはない。
独立性
在宅勤務では、1人でいるときに最高の作業をすることができる能力が必要になる。
これは、その人の性格が内向的であれ外向的であれ、必要になる能力でもあるわけだ。
1人で作業している際にメールやプロジェクトを、適切なスケジュールで、どんどん片付けられるだろうか。
自信
在宅ワーカーとして成功するには、自分のスキルと知識に関する自信を、持ち続けることが大事。
在宅勤務というのは、もともとがフィードバックがそれほど多くない状態で、意思決定を行う場面が多い勤務形態だ。
そして問題が発生したときには、まずはその結果を受け入れるという、「懐の深さ」も必要になる。
また、自分自身の意見やフィードバックを、相手に「ためらいなく伝えることのできる勇気」も必要だ。
ユニークで、そして時には一般受けしないアイデアを考えついたとき、外部から投げかけられる批評に対処できるだろうか?
ネガティブフィードバックを受けてもダメージを受けない自信とノウハウは、続けているうちに、身についてゆくもの。
こうして考えると、在宅勤務ができるというのは、実に幸運なことなのではないだろうか。
そしてその結果は、主に経済面でのフィードバックとして、戻ってくる。
場所と時間を問わず、いつでも好きなときに就業できるという自由は、何物にも代え難い大きな魅力だ。
仕事のプロフェッショナルとして、最高峰にとどまるための創意工夫を楽しむ。
こういう考え方を実行できる人にとって、在宅勤務は最高の形態ではないだろうか。
そこは多くの人が夢見ても実現できない「贅沢」な世界でもあるのだ。
考えても仕方ない。
人生は一度しかないのだ。
あとは思いきってチャレンジできるかどうかだ。