4人の名優演じる演奏家のキャラクターと私生活、そしてそれぞれの担当する楽器が相対するかのような描写が面白い。
弾きこなすのが難しい弦楽器の奏者という設定のうえ、楽器の経験はないはずなので、担当する楽器は、かなり練習したはず。
ただ、映画の中では実際の演奏シーンはそれほど多くない。
第1バイオリン奏者ダニエル役のマーク・イヴァニールがよかった。
音楽面のリーダーで求道的な雰囲気を漂わす独身貴族の第1ヴァイオリン。
音楽に関しては妥協を許さないエゴイスト、という設定だが風貌と雰囲気が良く合っている。
住んでいる部屋は職人のアトリエのようなインテリア。
物腰静かで渋くマイペースなうえ、シックでオシャレなオッサンだ。
第2ヴァイオリンとヴィオラはいわゆる内声部を担当。
この二人が夫婦というのがおもしろい。
同じ内声部でもヴィオラと第1ヴァイオリンは全く違う楽器だ。
この作品の第2ヴァイオリンのロバート役を、亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンが演じている。
第1ヴァイオリンに音楽作りを独占され、自分が本来やりたい音楽をやらせてもらえない、という不満が溜まっているという設定。
しかも私生活でも妻であるヴィオラが第1ヴァイオリンと昔つきあっていたり、さらに物語の途中で自分の娘まで第1ヴァイオリン奏者と寝ているということが判明。
ロバートとジュリエットの娘アレクサンドラ役はイモージェン・プーツ
当然のことながら、第1ヴァイオリンに対しては憎さ百倍モード。
なわけで途中、第1ヴァイオリン奏者を殴るシーンが出てくるのだが、自分の楽器はちゃんとしまってから殴っている。(笑)
実際のカルテットの音はブレンターノ弦楽四重奏団が担当したという。
最後の方で登場する、新しいメンバーとして加わる事になったという設定では、現役団員チェリストである、本物のニナ・リーN(ina Lee)が実名で出演。
彼女が登場して、演奏が始まるシーンでは、楽器の扱いや目線の飛ばし方、弾き方が違っていた。
見る人が見れば、ウデの差はバレバレ。
俳優はカメラを意識し、プロの音楽奏者は音を意識するわけで、その違いが出ていのがまた見もの。
10歳からチェロを弾き始めたプロと比べると、弓の動かし具合などが違うのは、まあ仕方ないところだろう。
何の予備知識もなしに観始めたが、あれよあれよという間に終わってしまった。
というように、音楽の好きな映画ファンなら、必ず魅入られてしまうはず。
見終わって「しみじみ」とするような味わいのある、人間ドラマをたっぷり堪能できる佳作だ。
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