ロイターの記事で取りあげられた株式薄商いの原因視される超高速取引、「濡れ衣」の声もが結構面白かった。
HFTとは「ハイ・フリークエンシー・トレーディング」の略語で、「超高速取引」「高頻度売買」「超高速売買」などと表現されている。
基本的に、こういうコンピュータを使った高速トレーディングは、アルゴリズムに基づいた自動売買と組み合わせて行われる。
市場が大きく乱高下したり、大きく下げる等という、好ましくない状態が発生すると、それが誰のせいなのか?という犯人捜しが行われ、そのやり玉に挙げられやすいのがHFTだ。
HFTがその犯人だという理由は、自動売買を行うヘッジファンドなどがHFTで、値動きを一方向に偏らせたからだ、という理屈のようだが、本当にそうだろうか?
株価が下落し、ある一定の水準になると、一定の保有株を売るという、アルゴリズム(コンピュータ・プログラム)を使ったトレードは、こうしたHFTが生まれる前から行われている手法であって、HFTが登場してきたこととは、本来全く関係ないことなのだ。
トレーディングには、トレンド・フォロー型(順張り)とリバーサル型(逆張り)があるわけだが、HFTは超短期の取引が主体だ。
そのため、逆張りでポジションでじっくり待つなどという方法ではなく、圧倒的にトレンド・フォロー型が主流となっている。
つまり、「安く買って高く売る」のではなく、「高く買ってより高く売る」と「安く売ってより安く買い戻す」が主な戦略となるわけだ。
これは我々のトレーディングと同じ考え方だ。
そのため、結果としてHFTは流動性を増加させてくれるわけだ。
我々個人トレーダーにとって、このHFTが生み出す、トレンドフォローの流れが増加するというメリットは、かなり大きいと言っていいだろう。
HFTは常に、アルゴリズムを使った自動トレーディングで行われる。
そのため、HFTの持つクセを「活用」することができるわけだ。
当サイトで紹介している、フィボナッチの236ガイドラインや、クアトロセットアップなども、アルゴリズムを使ったHFTトレーディングで、判定材料として使われている。
昨夜の BEAVの3分チャート
明らかに236のガイドラインが監視されている痕跡だ。
昨夜のサンディスクの10分チャート
株価は終日上下の236ガイドラインの間だけで動くよう、コントロールされていることがわかるだろう。
昨夜のアップルの10分足チャート
ロングサイドのクアトロセットアップゾーンを示す青いラインが、サポートの役割を果たしている。
そしてその後満を持して、一気に買い上げられている。
上の例のように、動き出すと一斉に順張りトレードが行われ、時にマーケットの動きを加速する効果を生み出すことも少なくないのだ。
HFTは超短期取引のため、数時間もポジションを抱えることは、まずないといっていいだろう。
数分、数秒の単位で決済取引を行うため、売ったら買うし、買ったら売る、という反対売買が頻繁に行われる。
そのため、マーケットの動きを抑制する役目をも担っていることになるわけだ。
またHFTのアルゴリズムには、さまざまなタイプがあり、取引データからトレンドを判断して取引を自動執行するシステムだけではなく、経済指標の数字を読み、売り買いを自動的に判断するシステム、さらにはニュース記事のヘッドラインや、ツイッターの内容を読み取って自動執行するHFTなど、多種多様のシステムが存在する。
先だっての4月24日、米国のAP通信の公式ツイッターがハッカーに乗っ取られるという事態が発生したことがあったが、覚えていらっしゃるだろうか?
ホワイトハウスが爆破され、オバマ大統領が怪我をしたというニュースが流れ、米株式市場が一時急落。
この日のネットでのガイドによる開始から6分までのパフォーマンスは何と +12380ドル!
この際も自動化されたHFTなどの高速取引が、引き金となったわけだが、我々もこれに便乗したというわけだ。(笑)
そもそも高速自動売買で勝手に、ザクザクと儲かるシステムなど、この世に存在しないのだ。
人間であるトレーダーがそれぞれのノウハウを盛り込み、それをアルゴリズムに組み入れ、自動で判定させるわけだ。
だから、勝てるシステムもあれば、負けるシステムもあるわけで、あるパターンの時には強いが、特定の条件が重なったときは勝てない、等ということが起こるのは、高速取引であろうとなかろうと同じ事。
トレードでは、一定の値幅分を獲るには、一定時間保有した方が有利になるわけだ。
そのため、セミナーではトレンドに沿って動いている銘柄は、できるだけホールドしろと、念を押している。
たとえば千円の値幅を千株トレードすると100万円の利益だ。
だが同じ値幅を高速売買で1円を抜いて獲ろうとすれば、株価が一円動く時間内に100万株を売買しなければならない。
当然のことながら、売買に応じてくれる相手が必要になる。
つまり相手がいなければ、自分で自分の首を絞めることになるわけだ。
100分の一秒早く買うことで、より安い値段で買えたとしても、一定の利益を出せる値段になるまでには、ある程度の時間が必要になるのだ。
これはHFTであろうとなかろうと同じ事。
それに大量の持ち株をマネージメントしなければならない機関投資家の場合、気配が下落したら買いを入れ、上昇したら売りを入れるというアルゴリズムで、損をするリスクを低減しなければならない。
そのため、HFTを利用するときに売り指値をどんどん切り下げるというような、バカなことはやるわけがないのだ。
HFTでは、売りと買いのワンセットを単純に超高速で行うことで儲けるわけではない。
HFTは現物と先物のさや取りや、先物のラージとミニとの間での鞘取りなど、執行速度の速い先物絡みでもって利用されることが多い。
日本の東京マーケットでは、現物株と日経225先物戸の鞘(さや)取りや、日経225のラージとミニとの鞘取りなどに利用されている。
アメリカで2010年5月に、ダウ平均が5分間で573ドル(5.49%)急落し、その後1分半で543ドル暴騰したことがあったのだが、ご存じだろうか?
この異常な株価変動により、2万件以上もの約定が取引所の決定によって取り消されるという事態が発生したわけだが、当初その原因が不明だったため、HFTが何らかの役割を果たしたのではないか?と指摘されたことがあったのだ。
その後の証券取引委員会(SEC)等の調査結果によると、HFTの売買が売りに偏ったため相場を押し下げたわけではなかったのだ。
株価急落の原因となったのは、あるミューチュアル・ファンド(投資信託)による株価指数先物の大口の売り注文で、この発注方法が稚拙だったため、先物価格が下落。
この時HFTは、むしろ売りに対して買い向かう機能でマーケットを支えたわけだ。
だが買い持ちポジション解消のために先物売りが大量に行われ、さらに現物市場では多くのHFT利用者の発注をめぐり、ある値幅以上の価格変動が生じてしまったのだ。
そのため、取引が一時停止されるプログラムが作動、その結果流動性が急速になくなり、株価が急落したというわけだ。
ナスダックはHFTを、取引所のサーバー内に自社サーバーを設置し、全てのポジションを当該営業日中に決済するものと定義している。
だが、ナスダックによると、年間収入約20億ドルのうち、HFTの影響を受けるのはわずか1200万ドルと見ている。
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