昨夜の米国マーケットは、大きく下落し、ダウ平均指数は200日移動平均線を切ってしまいました。
その理由は「財政の崖」への懸念
「財政の崖」とは何か?
2000年代から始まった大型減税策がが2012年末に期限切れとなります。
次に2011年の債務上限問題で始まった2013年1月からの強制的な予算削減。(国防費を中心に10年間で最大1兆2000億ドルの歳出が強制削減)
減税が切れると「実質的増税」と「強制的な歳出削減」のダブルパンチを喰らうわけです。
そのため「崖から落下するような急激な財政の引き締め」が起こるかもしれないのです。
なぜ「崖」と呼ばれているのか?
それは景気の下押し規模が、巨額だからです。
英系投資銀行Barclays Capitalによると、その規模は6300億ドル(約50兆円)!
米民主党と共和党の指導部は7日に、「財政の崖」回避策として、増税や歳出削減について、異なった見解を示しています。
共和党のベイナー下院議長は「レームダックセッション中に財政不均衡の問題を一夜にして解決することはできない」と述べ、「財政の崖」を回避するため、まず短期的な解決策を見つけ出し、その後2013年に実質的な債務削減策の策定に取り組むべきと主張しています。
一方、民主党のリード上院院内総務は、富裕層向けの減税を打ち切るべきと主張。13日から始まるレームダックセッション中に民主党と共和党が主要な措置で合意できることを望むとの考えを示し、再選されたオバマ米大統領は年収25万ドルを超す富裕層向けの減税打ち切りを明言しています。
さらにオバマ大統領は7日、共和党のベイナー下院議長と民主党のリード上院院内総務に電話をかけ、財政赤字を削減し、減税や雇用創出で議会と協力してゆく姿勢を示しています。
年末に重なる6000億ドル規模の自動的な歳出削減と減税措置の失効をどうすれば回避できるのか?
ホワイトハウスと議会に残された時間は2カ月足らず。
大統領選挙が終わったところで、米国の経済面を眺めてみましょう。
個人税制では、トップ3%の富裕層が、個人税の6割を納めているため、現在の税制は金持ち優遇と言われています。
そのため選挙の行方は、失業やエネルギー価格の高騰などに苦しんでいる中間層次第と言われていたわけですが・・
民主党(オバマ大統領)
年収25万ドル(約2000万円)以下の低中所得者へのブッシュ減税の延長
最低税率の富裕層への適用
「制度の抜け穴」を埋めることによる雇用の海外移転阻止を主張
共和党(ミット・ロムニー)
全所得層に対するブッシュ減税の延長
個人所得税率を一律20%引き下げ
低中所得者層による利子・配当・キャピタルゲイン税の撤廃
相続税、ミニマム税(AMT)の撤廃
共和党は、高額所得者や富裕層にも優しい政策で、キャピタルゲイン課税の撤廃などは、ウォールストリートにとっても大きな支援になるわけです。
オバマ大統領はこれを「金持ち寄りの政策」だと批判、収入の多くを不労所得から得ているロムニー氏は、$20m(約16億円)近い収入を得ていながら、今でも20%も税金を払っていないと指摘したわけです。
ロムニー氏はこれに対して、成功者から税金を取り上げると景気にマイナスな上、富裕層が引続き税制の6割を負担することに変化はないと反論。
大手監査法人のKPMGのデータによると、アメリカの実効税率は、年収10万ドル(約800万円)の世帯同士の国際比較ではさほど高くないのです。
法人税
焦点はアメリカの労働市場の競争力の回復と雇用問題。
両党とも法人税率の引き下げによる雇用促進を掲げています。
オバマ大統領がその点についてロムニー氏は曖昧で、雇用流出先の中国を「為替操作国」だと呼ぶことで応戦。
アメリカ企業の実効税率は39.25%(2008年)
日本企業の実効税率は39.54%(2008年)
赤字解消の財政政策
民主党(オバマ大統領)
「大きな政府」で富裕層減税解除を中心とした財政赤字削減
資源会社に対する優遇措置の撤廃
国防費の削減
共和党(ミット・ロムニー)
「小さな政府」で大幅な歳出削減(オバマケア撤廃等)による財政赤字削減
メディケア・メディケイドを確定給付型から確定拠出型へ移行
強制歳出削減メカニズム、国防費削減には反対
共和党は大幅な税金のカットを主張しながら、その穴をどう埋めるのかについては不明確に見えるわけです。
高速道路の無料化や子供手当てなどのばら撒き政策を行っても、財源を明確化しなかった日本の民主党と似ています。
ウォールストリート規制
民主党(オバマ大統領)
民主党がドッド・フランク法(金融業界規制・投資家保護法)の維持
資産規模10億円以上の社会階級では、逆に教育問題や環境問題への関心が高く、民主党支持者が多い
共和党(ミット・ロムニー)
撤廃を主張
資産規模10億円以下の弁護士、医師などの専門職を中心とした小金持ちは、共和党支持者が多い
NYなどの大都市は、一般的には圧倒的な民主党の地盤ですが、ウォールストリートは共和党寄りと言われています。
これから年末にかけて、株式市場からは目の離せない展開になっているようです。
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