ワイパーというのは、水を拭い取っているわけではない。
ガラスの表面についた水を、均一な同じ厚さの膜に広げるのがワイパーの役割なのだ。
表面の水膜が一定の厚さだと、光は屈折することがないため、視界は歪まず、くっきりと見えることになる。
厄介なのはカーショップやガソリンスタンでも売られているほどポピュラーなアイテムの撥水剤。
能書きを見ると、それほど高くない値段と相まって、誰もが思わず手を出してしまうアイテムでもあるわけだ。
これを塗ると、ガラスの表面についた雨は、コロコロした玉状になる。
ただこれが最大の効果を発揮するのは、街灯の無い高速道路を夜間に走行していて、かすかな雨になった時だけ。(笑)
撥水剤で処理をして、ワイパーを動作させると、ブレードのあとに白い曇りのような膜ができることは、使われたことがある方ならよくご存じだろう。
これは非常に小さな水の玉が並ぶため、目には白く見えるからだ。
ワイパーブレードは、本来の仕事としてブレードで均一な水の膜にしようとする。
だが撥水剤は、雨は無数の極小な水玉を敷き詰めた状態にしようとする。
そのため、ブレードが拭いた後に白い膜が残るように見えるというわけだ。
ならばというわけで、ワイパーを高速で動かすと、今度は白い部分が消える前に、次の一拭きでまた白い部分が速攻でできてしまうのだ。
くそッ!(笑)
というわけで常に白い部分で前面を覆われることになり、ただでさえ見にくい雨の視界はさらに悪くなる。
これが悪夢でなくて何だというのだろうか?
これに懲りて、一度使ってから金輪際使うのをやめてしまった。
本来ワイパーの立場で言えば、撥水してもらっては困るものなのだ。
そのため自動車メーカーは、フロントガラスの表面を親水性になるように、特殊なコートをわざわざ施しているくらいなのだ。
オーマイガッ!(笑)
おまけに多くの撥水剤にはシリコンが使われているが、ワイパーを動かすと塗ったシリコン皮膜はまだら状に剥げてゆくわけだ。
その結果、ワイパーがビビることになる。
つまり撥水剤というのは、フロントガラスを均一に綺麗な状態でコートされた状態に常に保つ必要があるという、超めんどくさいメンテが必須の製品なのだ。
だが撥水剤を塗り直すといっても、言うほど簡単ではない。
まずガラスの表面のまだらになったシリコンを専用の液体で掻き落とす必要があるのだ。
これをやらずに、上から重ねて縫っても余計にまだらになるだけ。
メンテのためには、チカラと時間と根気とお金が必要になるという、四重苦の世界が待っているというわけだ。
調べてみると、撥水剤はもともとが30年程前に戦闘機の軍事技術から、民間用に転用され、実用化された技術。
つまり、本来は戦闘機ほどの速度でなければ、十分な効果は期待できないシロモノだったのだ。
おまけに、これを使うと効果が出るのは、ワイパーを全く使わない場合だけ。
結局撥水剤は、ワイパーが壊れたときには、風圧で雨が飛んで視界が確保される、というメリットはあるかも知れない。
だが今までワイパーが壊れたことは、タダの一度もないのだ。(笑)
というわけで今回の日記は、自分の体験に加え、沢村慎太朗 FMOの購読をきっかけに購入した「午前零時の自動車評論」という本で、ワイパーブレードの会社への取材の項目に、こうした仕組みが書いてあったので、それを併せてまとめてみた。
参考になれば幸いだ。