シャープの社長が、8月から「iPhoneのディスプレイ」の出荷を開始することを明らかにした。
ロイターの報道によると、シャープの奥田隆司社長は8月2日(日本時間)、同社が8月から「iPhone」向けディスプレイの出荷を開始すると述べたという。
これだけ名の知られた企業の社長が、公の場で言及するのは異例のことだ。
シャープの奥田社長は、自社の存在をアピールしようとしたのだろうか?
アップルは、9月12日のイベントでの新製品公開に向け、準備を急いでいるという。
計画を知る関係筋がロイターに明らかにしたところによると、デザインを刷新した「iPhone(アイフォーン)」の新型が発表されるとの憶測が浮上している。
次期モデル予想図
シャープに関しては、シャープの株価が下がったため、出資に合意している台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、出資を見直すことを発表したばかりだ。
どちらにしろ、この資本提携は実質的には台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業グループによるシャープの買収だ。
日本の大規模なエレクトロニクスメーカーの一角が、外資の軍門に降ることを意味している。
シャープは金曜日に大きくギャップダウン。
株価は200円を切ってしまった。
鴻海は、まずシャープ本体の筆頭株主になる(報道によれば比率約10%)に加え、主力の液晶事業の中でも重要なカラーフィルター技術を保有した堺工場は、子会社のSDPに移管したうえで鴻海のオーナーや関連会社が46.5%を支配するというもの。
SDPに関しては、シャープ本体が46・5%、鴻海側が46・5%という報道資料もあるが、シャープ本体については10%弱を鴻海が持つため、実質はSDPの51・2%は鴻海のものになるわけだ。
日本のメディアは、こうした買収劇を「資本提携」とか「共存共栄策」などという曖昧な言い方で報道している。
「敗戦」を「終戦」と言い換え、「占領軍」を「駐留軍」と言い換えてささやかなプライドを満足させた1945年の「敗戦」と似ているのではないだろうか?
月足で見ると、株価は5年前の2007年6月がピークで、以後株価は転落する一方。
注目すべき点は、アップル社の完成品組立外注先の「FOXCONN」が、この「鴻海」のグループだということ。
日本のメディアはハッキリ説明していないが、具体的に言えば、シャープはこれでアップルの孫請けになるということになる。
シャープは、ここまで株価が下落するまでに日本の同業他社との合併という選択もあったはずだ。
だが対等でない合併で「日本語を話す同類」の支配を受ける屈辱、複雑な人事制度を合わせる手間などを考え、外資を選択したのだろう。
アップルは高値更新中。
9月の新製品で株価は一気に上昇するだろう。
さらに痛かったのは日本の金融機関の支援が得られなかったという点ではないだろうか?
今回の鴻海グループの出資は、第三者割当、つまり、新たにシャープが株を発行して鴻海が買うわけだ。
報道によればシャープには669億円が入るのだそうだが、要はそれくらいのカネさえもを他から調達できなかったということになる。
現在の日本の郵貯や銀行には、リスクを好まないマネーばかりが集まっている。
そしてそのカネで国債をグルグル回しているため、シャープに金を貸すというリスキーな危険を避けたわけだ。
シャープは「ガラパゴス」などという自嘲的な名前で、未成熟な日本国内のタブレット市場に「ハード」で参入して大失敗。
さらに喋る掃除ロボットなどという10万円を超える製品を出すなど、株主も社会も「タオルを投げる」べき状態になっているわけだ。
要するに「国際的な市場は分かりません」と告白しているようなものだ、と言っては言い過ぎだろうか?
部品メーカーの、しかも孫請けになるとすれば、マージンは薄くなるわけだ。
赤字は回避できても、競争力維持のための研究開発は苦しくなってしまう。
その前に、将来的に本当に伸びそうな技術は、どんどん鴻海本体に吸い取られてしまうだろう。