経済学者でありベストセラー作家でもある「野口悠紀雄氏」が東大で金融の最先端実務を教える大学院を開設しようとししたが「金儲けの手段を大学で教えるのは・・」と学内から総スカンを喰って挫折した話をご存じだろうか?
まさにこちらに書かれている通りで「金儲けは汚いものだから学校で教えるのはダメ」という発想や「肉体的な発汗を伴う労働だけが尊い」という考え方は、日本独特の価値観によるものだと思う。
日本は戦後復興のために学校では「モノ作り」の重要性に重点が置かれて来たため、汗水垂らして地道にコツコツと働くことの価値観だけが絶対視されているという側面があるようだ。
金融に関して米国の現状を見ると「日本は果たしてこのままでいいのか?」と思ってしまうが、下記はこちらにある記事を日本語で簡単にまとめたものだ。
さて皆さんはどのように感じられるだろうか?
米国では大学院のビジネススクールとして、1996年前半にMITのスローン経営学大学院で、最初のトレーディングルームが開設されている。
以後60以上のビジネススクールでこうした教育が行われている。
1996というと、ちょうど私がトレードを始めることになった一年前だ。
The Bert W. & Sandra Wasserman Trading Floor in the Subotnick Financial Services Center
2000年開設
敷地面積 7,200スクエアフィート・668.9 m2・ 98.36 坪
建設費: 300万ドル(3億4800万円・116円=1ドル)
マンハッタンのミッドタウンにある Baruch 大学のトレーディングルームは、911事件が勃発後、取引継続のために急遽開設されたもので、事件の二日後には20回線の電話が開設され、仮想と実際のトレーディングのために使用されたという。
Trading Room in the Hughey Center for Financial Services
1997年開設
敷地面積 3,500スクエアフィート・ 325.2 m2
建設費: 180万ドル(2億880万円・116円=1ドル)
Bentley 大学のトレーディングルームは、MBAの学生のために提供されている。
SS&C Technologies Financial Accelerator
2004年開設
敷地面積 12,500スクエアフィート ・ 1161 m2・ 351.3 坪
建設費: 2000万ドル(23億2000万円・116円=1ドル)
コネチカットにあるThe UConn Financial Accelerator は新しいSS&C Technologies program で、MBAや博士号を取得する学生は、スポンサー企業の様々な問題を解決するために、そして会社のための戦略を開発するための、研究開発に取り組んでいる。
Financial Services Laboratory
2004年開設
敷地面積 2,000スクエアフィート ・ 185.8 m2・ 56.21 坪
建設費: 60万ドル(6960万円・116円=1ドル)
ペンシルバニア州にあるリーハイのトレーディングのための実験室は、およそ8,200人の大学生および大学院学生が利用し、科学、芸術、エンジニアリングコースの25%の学生がプログラムに参加している。
Smeal College of Business Trading Room
2001年開設
敷地面積 1,200スクエアフィート ・111.5 m2・33.72 坪
建設費: 25万ドル(2900万円・116円=1ドル)
開設以来数百名の大学生、MBA、大学院生が利用、52台のデュアルディスプレイモニターのパソコンが設置されている。
Reliant Energy Securities & Commodities Trading Center
2001年開設
敷地面積 600スクエアフィート・55.74 m2・ 16.86 坪
テキサスにあるReliant Energy Securities & Commodities Trading Center は、ワークステーション、ブルームバーグの端末を備え、主にエネルギーの取引に関わる産業のリスクに関して学生に教えている。また学内でのトレーディングのコンテストも開催している。
EDS Financial Trading and Technology Center
1996年開設
敷地面積 2,500スクエアフィート・232.3 m2・70.26 坪
建設費: 200万ドル(2億3200万円・116円=1ドル)
テキサスのオースチンにあるこの学校の卒業生は、シティグループ、ドイツ銀行、ゴールドマン・サックスを含む60以上の会社へファンドマネージャーとして就職している。
University of Toronto, Rotman School of Management
Rotman Financial Research and Trading Lab
1999年開設
敷地面積 1,700スクエアフィート・ 157.9 m2・ 47.78 坪
建設費: 67万ドル(7772万円・116円=1ドル)
カナダのトロントにあるこの学校は、毎年約150人の大学生、MBA学生によるシミュレートされた2日間に渡るトレード競技会を主催している。
Seton Hall University, Stillman School of Business
Center for Securities Trading & Analysis
2004年開設
敷地面積 2,250スクエアフィート・ 209 m2・ 63.23 坪
建設費: 15万ドル(1740万円・116円=1ドル)
20人の学生が10台のワークステーションを使いモルガン・スタンレーやメリルリンチでトレードをするかのような環境でシミュレーションを行うことができる。
Wright State University, Raj Soin College of Business
MTC Technologies Trading Center
2005年開設
敷地面積 1,200スクエアフィート・ 111.5 m2 ・33.72 坪
建設費: 60万ドル(6960万円・116円=1ドル)
いかがだろうか?
学校にとっては学生募集のために、そして企業にとっては学生が即戦力となるため、こうしたトレーディングの施設と教育は双方にとって「強力なツール」になるという考え方がベースになっている。
米国の大手証券会社は、こうした施設には多額の投資をしているが、それは就職後の学生の訓練時間を減らすためにも、学校でのこうしたトレーニングは非常に有益だという理由によるものだ。
現実に卒業生はソフトウェアや新しい戦略の知識と共に、多くの金融関連企業に就職し、それが企業の競争力に繋がっている。
金融に関する知識がないと、金融に対する価値を不当に蔑視することに繋がり、どうしても最先端の金融に関する現状や制度の知識などが欠如することになる。
そのため、最先端の金融に関する技術に精通している優れた人材の育成には、大学での教育は不可欠ではないだろうか。
モノ作りは、同じ工程なら中国などの労働力の安い方が有利で、今後将来に向けての展望を考えると、開発途上国から追い上げられるのは、誰の目から見ても明らかだ。
だが日本の金融の世界は、同じような企業の中のケイレツによる人脈と情報を中心に成り立っている。
過去のデータ解析や徹底したシミュレーションによる科学的な理論によるアプローチの比重が非常に少ないため、人的ネットワークだけに頼らざるを得ないのが実情なのだろう。
アメリカでは、様々な人種である、アングロサクソンをはじめとしたユダヤ、華僑、イスラム、インドなどの様々な人的ネットワークに加え、上記で紹介した金融に関する教育による質の向上という蓄積が加わるわけだが、将来果たして日本が太刀打ちできるのだろうか。
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