夏の日差しがアンニュイな午後に、ピッタリのアルバムをご紹介。
「トリノの奇跡、ヨーロッパの哀愁」というサブタイトルが付く、イタリアのトランペッター Fabrizio Bosso。
ファブリッツィオ・ボッソ - ニュー・シネマ・パラダイス
超一流の腕を70%くらいしか使わず、その分「音楽」として楽しませるいう余裕でで構成された、彼にとっての3枚目のアルバム。
1.ザ・ニアネス・オブ・ユー
2.ニュー・シネマ・パラダイス
3.ユーヴ・チェンジド
4.恋に終わりなく
5.我が心のジョージア
6.夏
7.ヒオ・ジ・マイオ
8.サマー・サンバ
9.ジョイフル・デイ
10.あなたを思い出すこと
11.ユーヴ・チェンジド(インストゥルメンタル)
12.この素晴らしき世界
13.身も心も(Body and soul)
かすかに一定のリズムが刻まれ、少し不安を覚える和音からストリングスが流れはじめ、やがてミュートトランペットのメロディー。
そしてあるポイントから一気に色が変わる・・
一曲目からリスナーのハートを鷲掴みは反則でしょう。(笑)
メロディーを繋ぐスケールのフレーズが私好み。
ニュー・シネマ・パラダイスのイントロに、ミュートをはずしたトランペットのサウンドが絡み、例のメロディーが流れると、もう堪らない。
●YouTube - "Nuovo Cinema Paradiso" Final Scene
http://www.youtube.com/watch?v=BW_-0H_u3RQ
4曲目(恋に終わりなく)では、ゴージャスな3拍子のバックに乗って、サックスとペットのアドリブが交互に宙を舞う。
普通こういうストリングスが絡む演奏は、甘さだけが全面に出て、何となく物足りなくなりがちなわけですが・・
このアルバムでは、ハードにバリバリと吹きまくるアドリブのフレーズでもって「どうだ!」といわんばかりに、繰り出されるため、そうした心配はご無用、というわけです。
つまりストリングスとアドリブフレーズでもって、いわゆるアメとムチ。(笑)
5曲目はレイ・チャールズのあの名曲 Georgia on my mind
淡々と吹くテーマの合間に見せる、メロディーラインの崩しでもって「おぬしできるな!」ということをわかる人には、わからせるという案配がまたニクイ。
ピエトロ・ルッスのピノソロも琴線に響くセンスとあいまって、スパイスをとして効いているし、という具合で、まっくもっていやはや。
6曲目は「ESTATE」。
ライブですぜ。
このライブバージョンはピアノソロ、ベースソロ、そして肝心の彼のソロはないのかという間合いで、ソロが始まるわけですが・・
いやあ、参りました。
アルバムでは哀愁を帯びたピアノのイントロとゾクゾクするようなストリングスで始まるわけですが、まずテンションノートをしっかりと含ませた色合いで引っ張る。
こうして不安感を煽ったうえで、歌と同時にリリースし、聴き手のココロを一気に解き放つという、エモーショナルな揺さぶりでもって、引きずり込むという、なかなかの手口。
こうなると、もうダメでしょ。ここまで聴いて買わないケースというと、財布を忘れたときくらいか。(笑)
この曲はカルロス・ジョビンの曲だと思っていたのだけれど、違うんですね。
ライナーノーツを読むと、歌手でシンガーソングライタのブルーノ・マルティーノが1961年にイタリアでヒットさせたナンバー。
後にカルロス・ジョビンが自分の持ち歌として好んで演奏したという。
なるほど。
しかしこのスロー・ボサの間奏を、彼はフリューゲルの甘いノートでアドリブするわけです。
そのプレイは行き過ぎず、かといって足りなくもないという絶妙な匙加減。
7曲目はイヴァン・リンスの曲で「RIO DE MAJO」
8曲目のサマー・サンバで夏の気配も存分に楽しめるという心憎いアルバム。
最後の11曲目 You've Changed は甘いフリューゲルのノートで、夢見心地の世界へ。
おまけ
Fabrizio Bosso & Irio De Paula - Wave
繊細でデリケートな女性のハートは、溶ける恐れがあるため、ご注意あれ!
日本版ではボーナストラック「この素晴らしき世界」と「Body and Soul」が、さらに追い打ちをかけてくるので、重ねてご注意を。(笑)