今、誰が株を買うべきか という日経新聞のコラムをご覧になっただろうか?
こんな時だからこそ、勇気を持って、自社株買いをすべきだという趣旨の持論が展開されている。
「米国では自社の株価が安すぎると思えば自社株買いをするのは当たり前のこと。
それができない日本企業は勉強不足ではないか」。日本個人投資家協会理事で自身も株式投資家として知られる木村喜由氏は強調する。
木村氏の指摘する通り、米国市場では4―6月期以降、相場の調整入りと軌を一にするように自社株買いが増え、リーマン・ショック前の2008年1―3月期以来の高水準に達しているという。
記事ではこのように指摘しているわけだが・・
ではチャートでチェックしてみよう。
記事では、「米国市場は4―6月期以降自社株買いが多い」と書かれているが、下はダウ平均の月足チャート。
該当する時期はまだアップトレンド。
アップトレンドで買い、というのはトレードの基本だ。
下はナスダックの指標だが、基本的にダウと同じ形。
つまり米国の企業は、アップトレンドを確認したうえで自社株買いをしているのだ。
では東京マーケットは?
下は日経平均の月足チャート。
ダウントレンドのまっただ中で、あなたは買いたいと思うだろうか?
まともなトレーダーなら買わないだろう。
自社株買いをするにはタイミングも絶好だ。
株価が下がり、今や東京証券取引所第1部の市場平均PBR(株価純資産倍率)は0.95倍、第2部に至っては0.66倍という低水準にある。
ははは。絶好のタイミングではなく絶好のカモですな。(笑)
記事は、あくまでファンダメンタル主体で、お決まりの「安値買い推薦」の理屈を展開している。
買うタイミングははアップトレンドになってから、という基本を、この記事を書いている記者は知らないのだろうか?
自社株買いを実施した企業に対する市場の反応はおおむね好意的だ。
一例がキヤノン。「手元資金の状況と投資計画、株価の動向を念頭に置いて自社株買いを決めている」といい、2007年に初めて3500億円の自社株買いを実施して以降、2008年に1000億円、2010年に500億円と続け、今年も6月と8月に500億円ずつ自社株を買った。
とキヤノンを引き合いに出している。
ではキヤノンのチャートを見てみよう。
マークは自社買いをしたと思われる位置。
結局トータルの投下資金の価値を下げるだけの結果に終わっていることは、チャートを見れば一目瞭然。
しかも記事では・・
震災後も同業他社に比べてキヤノンの株価が堅調・・
と書かれているが、同業他社に比べダウントレンドの傾きががひどくないというだけであって、アップトレンドになっているわけではない。
たとえ今のように外部環境が不透明なときでも、自社株買いには株価の下支え効果があるはずだ。
年度の後半に向けて実施企業が増えることを多くの投資家も期待している。
実は今年は黙っていても企業の自社株買いが増えそうな雲行きではあるのだ。
自社株買い程度で、株価が下支えできるという理屈だが、根拠はどこにあるのだろう?
チャートを見る限り何の根拠もない単なる希望的観測だ。
というツッコミどころ満載の眉唾レベル記事を堂々と掲載している日経新聞。
だがトレーダーにとっては、お笑い娯楽ネタとして、なかなか面白い媒体だと言えるだろう。
ガンバレ日経新聞!
コメントする