現在進行中の世界的な経済危機の仕組みは、前に「お金の流れと仕組みを知る」で書いた。
では最も危ないのはどの国か?
まずアメリカはロイターの記事「債務上限引き上げなければ「想像絶する打撃」=米財務長官」にあるように、さらに借金を増やさなければ支払えない状態になってしまっている。
Bipartisanpolicy.org によると金がなくなるのは8月2日から9日あたり。
議会の事前承認野スケジュールから、実質的なデッドラインは 7月22日(金)。
8月の財務省キャッシュフローは現金収入が1742億ドル現金支出が3067億ドル。
つまり現金収入が支出の半分しかなく、借金の上限を国で引き上げることを決めなければ、経済が崩壊すると予測されているのだ。
アメリカのGDPは15兆2000億ドル(1216兆円)、負債は14兆2900億ドル(1143兆2000億円)で、財政赤字がGDPの94%にも達するのだ。
ガイトナー米財務長官は、連邦債務引き上げ問題が合意されれば、辞任するという。
8月2日の期限までに一体どういう結果が出るのだろうか?
ヨーロッパでもギリシャの財務危機が伝えられ、株式市場の乱高下の原因となっているのは皆さんもご承知の通り。
だが、ヨーロッパで本当に危険なのはイギリスだ。
EU結成時の条約では、財政赤字がGDPの3%以内でなければ、EUに加盟できないことになっている。
これを厳密に適用すれば加盟できる国は全くなくなってしまうことになる。
だがイギリスは70%を超えドイツ30%フランス20%を遙かに超えた数字となっている。
大前研一は「日本の公的債務に関する錯覚」と題して以下のように解説している。
ギリシャ国債は外国が買っている対外債務のため危機になっている。
日本国債は国民および日本の金融機関が買っているので投売りは起こらない。
すなわち暴落の危険性は少ない、と解説する者がいる。
まさに「曲学阿世の徒」と呼ぶにふさわしい解釈だ。
海外の投資家が日本の公的債務をまだ比較的安全と見ているのは錯覚。
つまり、危なければ誰も買わないか、高利回りにしなくてはいけない。
現にギリシャが先週行ったユーロ建て10年もの国債発行では6.25%もの利回りとしなくてはならなかったわけだ。
それが、日本の場合にはまだ1%台で発行し、買い手がいるのだから安心なのだ、という錯覚だ。
しかし、買い手は金融庁に睨まれた銀行・生保・亀井大臣の大本営が経営する郵貯や簡保。
さらには日銀や中小企業金融機関など。
もちろん国民はそんなことは知らない。
いざとなれば自分たちが預けたものは返ってくる、と信じている。
だがどの金融機関も日本国債がコケた時には返済資金は当然ないわけだ。
もう一つの錯覚は、ギリシャやアメリカなどとは違って外国人が持っているわけではないという点だ。
約6%(44兆円)は外国人が所有している。
彼らが一斉に売り浴びせれば、ダイナマイトどころのインパクトではすまない。
日本の金融機関も当然パニックに襲われ、狼狽売りせざるを得ないだろう。
そのとき国民は初めて自分たちの安全と思った貯金や生保、信託などが実は裏側で国債に化け、それが国家のルーズな財政を助長していたのだ、と気がつくのだ。
日本のGDPは2011年で547兆円、一方借金は1000兆円を超えているため財政赤字はGDPの183%にも達する。
米国の94%、イギリス70%、ドイツ30%、フランス20%を遙かに超えたダントツの数字となっている。
米国債を世界で最も保有している国は中国だが、政府支援機関の債権まで含めると日本が1位。
もしものことがあれば、年金、高齢者保険、低所得者保険制度、防衛関連の支払いがストップし、個人は政府支払いを受けられなくなるのだ。
さてあなたは、普段からこういうことを考え、さらには対策をしているだろうか?