フロント部分へ自転車が倒れた傷の補修で修理に出していたC6。
代車として相手方の保険会社が手配してくれたのは白いクラウン。
ようやくC6が戻ってきたので、今日は久しぶりのクルマネタ。
あらゆるシーンでクラウンをC6と比較しながら10日間ほど使ったインプレッション。
下のC6と比べると、デザインのテイストが全く違う。
クラウンからC6へ乗り換え、走り出してまず感じるのは、ステアリング・ブレーキ・アクセルのタッチの繊細さ。
クラウンと比べると、C6はブレーキとアクセルを含めた操作系全体が、注意深く統一されたかのようなタッチとバランスで構成されている。
こうした案配の味付けから察するに、たぶんシトロエンのドライビング好きがチューニングをしたのではないだろうか。
たとえばブレーキでは、クラウンの場合、C6よりストローク幅が少なく、しかもタッチが重い。
そのためスムースに減速させるには、デリケートな操作が要求される。
言い換えると、神経を使って踏まないと、スムースなブレーキングが難しいのだ。
つまり、ブレーキを踏むたびに微妙なチカラ加減でのコントロールが要求されるため足が疲れることになる。
一方C6はクラウンに比べるとブレーキのストロークが適度な長さというか深さがあり、全域にわたって踏むチカラと、効きの関係がリニアなため、ブレーキングが快感となるレベルまで到達しているのが素晴らしい。
そのため、余計な神経を使うことなく、安心してラフに踏むことができるというわけだ。
クラウンを長時間運転していると、加速減速ともに、C6に比べて余計な神経を使い続けなければならない。
クラウンだけを運転していると、そのうちに慣れてはくるのだが・・C6へ乗り換えると、その違いの大きさに愕然とすることになる。
これはチョイ乗り比較では、わからない部分だ。
加速時にも同じような現象があり、クラウンの場合アクセルを不用意に踏むと、出だしでグワンと飛び出す。
そのため、慌ててペダルを踏むチカラを緩めることになり、ギクシャクとした運転になりやすい。
おまけにアクセルの踏み出しの部分が、意外と渋いというか重いため、えいやっとチカラ入れて踏むことになり、余計にグワンと飛び出しがち。
後席へ人に乗せたときに、前後Gの変動が少ない、スムースな運転をしようとすると、クラウンの場合、かなり神経を使ったアクセルコントロールが要求されることになる。
一方、C6の場合、踏みはじめの部分は反応が鈍くなるように意図的に設定されているようで、少々ラフに踏んでも急激な加速Gがからないようになっている。
つまりC6の場合、ブレーキもアクセルも、多少ラフな操作でも、後席の住人に余計な前後Gがかかりにくいのだ。
フランスでは大統領の公用車として使われているだけあって、「こういう最も大事な部分の味付け」のバランスが絶妙と表現したくなるレベルでチューニングされている。
ハンドリングを比べると、クラウンの場合、高速道路での高速コーナリングでは、ステアリングから伝わってくるリアクションや感触が、少々ナーバスだ。
そのため、スムースに走らせようとすると意外に気を遣うことになる。
路面からの入力に対しての反応が意外にクイックな部分があるため、その部分に突如遭遇した場合、保舵力を微妙に調整しなければならず、高速道路では意外と気が抜けないのだ。
一方のC6はステアリングが非常にデリケートで軽いのにもかかわらず、道路のうねりなどを巧く吸収しながら、とにかく真っ直ぐ走ろうとする。
C6にはフロントの鼻先にセンサーがあって、路面の状況を読み取ってサスを制御しているらしいが、こういうところで効いているのかも知れない。
とにかくステアリングに軽く手を添えているだけで、まさに「矢のように直進」する。
そのため、余計な力が入らず、リラックスした気分でドライビングを楽しむことができるというわけだ。
総じて乗り心地はC6が圧倒的にスムースで滑らか。
クラウンからC6へ乗り換えると、まさに鏡の上を走っているように感じる。
クラウンも単独で乗っているとそう悪くないのだが、少し舗装の荒れたところを通過すると、意外に揺すられる。
クラウンは舗装の良いところではフラットなのだが、路面が荒れているところでの乗り心地の差が大きい。
一方のC6は、かなり荒れた路面でも、それをフワフワとした動きに変換し「いなして」しまうのだ。
こういうところは、さすがハイドロだなと思う。
だが道路のペイントなどを踏んだときにステアリングを通じて伝わってくる感触は、C6の方がデリケートで鮮明。
クラウンは、道路のペイントを踏んだかどうかが、わかりにくい乗り心地だ。
だが一方で少しのデコボコでも意外に揺すられるため、その2種類のフィールの違いがより大きく感じられることになり、乗り心地の洗練度が、C6よりうんと低く感じるてしまう。
クラウンのダッシュで使われている木目の色を含めデザインが、何となく垢抜けなく感じるのは、C6と比べるからだろう。
日本車だけあって、ダッシュボードのボタン類などの使い勝手はいいのだが、C6と比べるとダッシュボードが手前へせり出している。
そのため、室内に圧迫感があり、実際のサイズの違い以上に狭く感じてしまうのだ。
特にこのクラウンは、ナビの取り付けてあるあたりから、低級な摩擦音が出るのが興ざめで、せっかくの静けさが仇になり、気になってしょうがなかった。
C6のナビはディスプレイの位置がクラウンより高く、理想的な位置にセットされているため、とても見やすい。
上はクラウンの木目の色調だが、どことなく垢抜けない色味のため、何となくオッサン臭い内装に感じてしまう。
下はC6だが木目の色あいと使い方を含めたデザインがお洒落で、フランス車ならではの優雅さを感じさせてくれる。
ドアについているポケットのサイズはC6の方が大きく、また使いやすい。
C6のシートはランバーサポートの強さが調節できるうえ、シートの前端と後端の調節範囲もC6の方が大きく、自由度が高い。
クラウンのシート位置の調節レバーは、右手を下ろしたところにスイッチがあるため、手探りで探さなければならない。
C6はドアにあるため視覚的にわかりやすく、また使いやすい。
C6に比べると、クラウンはシートの座面長が短く、多少柔らかめの感触のため、長時間の運転では何となく疲れを伴う。
さらに得意なはずの細かな使い勝手の部分で、意外にもクラウンに問題を発見。
クラウンは運転席のドアを開けても、他の3枚のドアやトランクはロックされたままなので、C6に慣れていると、とにかく使いにくいのだ。
C6は運転席のドアを開けると、すべてのロックが解除されるため、リアシートへ置いた鞄から荷物を出す場合や、トランクの荷物の出し入れでも、余計な操作が不要となるわけだが、クラウンだと運転席のドアを開けても他のドアやトランクはロックされたまま。
なので、トランクを開けるには、トランクを開けるスイッチを押す必要があり、さらに後席に置いた鞄からモノを出そうとすると、そのたびにすべてのドアのアンロックスイッチを押す操作が必要になるのだ。
ちょっとしたことなのだが、日常の使い勝手を考えると、運転席のドアを開けると、すべてのドアやトランクのロックが解除される方が、圧倒的に便利。
上の室内写真からは、統一感のある優雅さの一端を窺い知ることができるだろう。
下はクラウンのメーター回りだが、中央に速度計があり、左に回転計、右には燃料計がある。
左のタコメーターより、右の燃料計の方が大きいのが興ざめ。
一方のC6はアナログっぽいデジタル方式という意外さが新鮮。
クラウンは通常2500rpm以下で素早くギアチェンジしてしまうため、かなり静かだ。
ひとたびアクセルペダルを踏み込むと、2000rpmから最大トルクの90%を発揮し、力強い加速感が得られる。
私の走り方だと、300キロ以上走って燃費は6キロ台で、C6とほとんど同じだった。
エンジンの音はどんな場合でも消し去ろうとするクラウンに対し、C6は踏むとエンジンの咆哮がその静けさの向こうから、それとはなく聞こえてくるのだ。
C6の「クオーン」というエンジンのサウンドは、ボタンを押してシフトスケジュールをスポーツに変更すると、エンジンをレッドゾーン寸前まで働かせようとするセッティングとなり、ナイスなサウンドをより長く楽しむことができるというわけだ。
このエンジン音がなかなか、スポーティー。外見とは裏腹に、ちょっと意外に感じる点ではないだろうか。
だがクルマ好きの人なら、こうしたちょっとした遊び心のあるセッティングは大歓迎だろう。
無機質に静かなだけのクラウンは、どうもこういう点が今一つ面白味に欠けることになる。
C6のサスペンションは、通常はフワっとした乗り心地なのだが、ひとたびボタンを押してスポーツモードにすると、シトロエン独特のフワフワ感は見事に抑えられ、足回りはしっかりとダンピングの効いた乗り心地に変貌する。
街中では使えないポルシェのサスのスポーツモードに比べると、遙かに実用的で使う気になるセッティングといえるだろう。
クラウンで唯一良かったのは、リアビューカメラ。
バックの時に見えるというのは、ストレスが少なく、割とサイズの大きなクルマでは、よりありがたい装備だと言えるだろう。
C6はセンサーがついて、ナビの画面に音と図で表示されるので、実用上は問題ないのだが、後ろが「見えるカメラは、あった方が便利なわけで、どうしようかなと思案中。
こちらが MOTOR DAYS モーターデイズ の C6 試乗記