WIRED VISION で面白い記事を読んでいるうちに、トレードの世界でもまさにその通りだ!と思い当たったので、今日はその忘備録日記。
トレードルームではマーケット開始前に、秒読みを始め、マーケット開始後は次々にマーケットの様子を言葉で説明するのだが、その情報の一部はスカイプを通してタイピストが文字でネットエイドへ書き込まれている。
トレーディングでは、このオープニングの10分ほどの時間帯にどれだけ集中力を発揮させ、利益を積み上げることができるのかがポイントとなるわけだ。
そのためには高い集中力で、やるべきことを判断してそれを実行に移さなければならないのだが、そこでの処理能力を向上させるにはどうすればいいのだろうか?
研究によると、体内時計を高速化することで、より多くの情報を記憶し認識することができるのだという。
以下の記事を読むと、トレードルームでのコマンダーの指示そのものが、以下で書かれているような効果を生み出しているのではないだろうか・・
人生をなるべく長く引き伸ばし、限りある時間の中からより多くの経験を引き出すための最も単純な方法は、日常の些細な出来事に対してもっと注意を向け、もっと感覚を研ぎ澄ませることだと。
たとえば、休暇をより長く感じたいならば、砂浜で昼寝するのではなく、新しい刺激を一杯詰め込むことが必要なのかもしれない。
一方、時間感覚と記憶の密度との関連を、逆の方向から利用することもできる。すなわち、人間の体内時計の進み方を速めることで、記憶を増やすことも可能なのだ。
1999年、マンチェスター大学の心理学者チームは、連続したクリック音、または速いペースで鳴らされるトーン音を聞かせることによって、人間の中の「ペースメーカー」を操作できることを証明した。
このようなクリック音を聞かせると、被験者の体内時計は加速する(時間の進み方が通常より少し速くなる)ことが分かったが、それはつまり、他のあらゆるものが、いつもより少し時間的に長く感じられるようになることを意味する。
その後、同じマンチェスター大学のチームが行なった新たな研究では、クリック音を用いて、体内時計の加速がもたらす影響を調べた。
その結果、体内時計のペースが速くなっているとき、われわれは周囲の世界が実際より遅く動いていると感じるだけでなく、実際にその間のことをより多く記憶していることが明らかになった。
言い換えれば、われわれの時間の感覚は、単に知覚が作り出した幻想というのではなく、実際に脳の情報処理速度を制御していると考えられるのだ。
体内時計の進み方が速くなれば、それだけ多くの情報を処理できる。
それはまるで、より高速なマイクロチップを大脳皮質に埋め込むようなものだ。
以下は、その研究からの引用だ。
先行研究において、5秒間のクリック音を聞かせると、その直後に聞くトーン音の主観的な長さが、(計時処理の「高速化」に合致する形で)引き伸ばされることが明らかになったが、クリック音はさらに、情報処理の速度にも影響を及ぼし得ることが、一連の実験によって証明された。
全般的に、最初にクリック音を聞かせた実験では、クリック音を聞かせなかった実験に比べて反応時間が有意に短かった。
一方で、ホワイトノイズを用いた場合は、反応時間に何の影響もみられなかった。
さらに、最初にクリック音を聞かせると、聞かせない場合と比べて、より多くの情報を記憶し認識することができたという。
(つまり、集中が必要な仕事をするときには、最初に速いペースのクリック音を聞けば良い可能性がある)。
冒頭のDavid Eagleman氏によるSCADジャンプの実験に戻ろう。
おそらくは恐怖の感覚はクリック音のようなもので、われわれの体内時計を高速化するのだ。
われわれは時間の速さは一定だと思っているが、実際にはそうではない。
絶え間なく流れ行く感覚さえも、全ての時間ペースを変えうるのだ。
いかがだろう?
集中が必要な仕事をするときには、最初に速いペースのクリック音を聞けばより多くの情報を記憶し認識することができる可能性が高くなる
ということは、コマンダーが次々に音声で指示を出す状況というのは、速いペースでのクリック音を聞くのと非常に似た状況にあるわけで、もしそうであれば、トレードルームでコマンダーの指示を聞きながらの作業というのは、感覚的に時間を遅く感じながら、トレードの判断を行うことができるようになるということになる。
トレードルームでコマンダーの指示を聞きながらトレードをする方が、ネットエイドで文字を読見ながらトレードするよりも、より多くの情報を記憶し認識することができる可能性が高くなるということになるわけだが、当然それは、損益に数字で反映されることになる。
ネットエイドを使ってのトレードよりも、エグゼキューショナートレーニングでの、トレーディングの成績が押しなべてよいのは、こうした理由が影響しているのではないだろうか。
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