神戸には、「個性あるうまさ」を追求している蕎麦屋が多い。
9月に始めて訪れてからは、何度も足を運んでいるが、「山親爺」は火曜の定休で、ここは木曜日という、素晴らしい休日コンビネーション。
つまり、神戸ではこのレベルの蕎麦を、一年を通して毎日蕎麦を楽しむことができるというわけだ。
これは凄いことだ。
店主が岡山にある父親の畑で蕎麦を栽培されていることからも、蕎麦に対する「こだわり」が伺える。
粉は毎日引き方を変えているとのことで、運が良ければ「スペシャルブレンド」打ちの蕎麦に出会えるはず。
カウンター席と4人掛けテーブル席が3卓で、店内が明るすぎないのもマル。
つゆは、甘くも辛くもないなかなかのバランス。
関西でよく出てくるカツオの強いソー麺つゆタイプではないのだが、山親爺と比べると、あっちの方ががしっかりしているかなと。
だが味の塩梅は蕎麦にはぴったりと合っている。
蕎麦は「すのこ」のない、溝つきの陶器の皿で供されるが、しっかり水切りされているので全く問題なし。
ひきぐるみ(850円)と色の白い「さらしな」(950円)がある。
これは「ひきぐるみ」
透明感があり のど越しのツルツル
感もほどよい絶妙な蕎麦で、こういうタイプの蕎麦は東京にはない。
「さらしな」では、のど越しのツルツル感が20%増にもかかわらず、蕎麦の旨さがしっかりと同居している。
おそれ入谷の鬼子母神
「ひきぐるみ」と「さらしな」を各一枚、というゴージャスなランチは、毎日の生活における、ピリッっと効いたスパイスとしての役割も果たしてくれる。
ここの「蕎麦湯」は「酢橘」や、あるときは「おろし生姜」が添えられた、ドロっとしたタイプ。
「料理」としてのレベルを目指しているという、この店の心意気が伝わってくる。
店主の父上の魚拓
この店は30代だと覚しきご夫婦で切り盛りされているが、昨日遅めの時間に訪れたらほぼ満席で大忙し。
はじめてで、カウンターに座ったため、仕事ぶりを拝見することになったのだが、ここは山親爺と違い、天ぷらや「かけ」もメニューにあるため、作る方はまさに「戦場」といってもいい忙しさ。
仕留めた道具も誇らしげだ
新しいタイプの蕎麦にチャレンジする神戸の蕎麦は、山親爺もそうだが、若い世代が積極的に個性を打ち出し、オリジナリティーと個性溢れる店が多いにもかかわらず、
東京よりも人口が少なく、営業的にも厳しいはずの神戸で受け入れられている。
日本のラテン圏としての関西人たちの特性が、この世界ではとてもうまく機能しているようだ。
蕎麦屋をやるなら、神戸ですぜ、ダンナ。(笑)
十割蕎麦 さくら
〒654-0027 兵庫県神戸市須磨区千歳町3丁目2-20
078-736-5979
昼 11:30~14:00(LO)
夜 17:30~21:30(LO)
毎週木曜日
おそれ入谷の鬼子母神(おそれいりやのきしもじん)
「恐れ入りました」を洒落て言う言葉。