一言で言えば、DVDを楽しむための擬似サラウンドシステム。詳細はここにWEBがあり、さまざまなリンクがある。
普段PCのある自宅の部屋のデスクには、フォステクスのニアフィールドモニターNF-1Aで音楽を聞いている。
パワードモニターといって、スピーカーユニットにあわせて設計されているパワーアンプはツイーターとウーファーが独立していることもあって、超高速レスポンスの低域をベースにしたサウンドは、素晴らしいものだ。
映画を見るための50インチプラズマディスプレイがおいてあるリビングでは、2チャンネルでのJBLの小型モニタースピーカーで楽しんでいたのだが、その理由はきちんとした51.chサラウンドを楽しみむには、ココに詳細があるように、普通の部屋ではスピーカーを5本も置けないからだ。
5.1chサラウンドの音響特性を生かすには、放送など無線通信の規格制定を行なっているITU(International Telecommunication Union)で、サラウンド音声を評価するための「ITU-R BS775-1」という音響条件を定めているが、多くの映画音響スタジオでは、この勧告に沿ってスタジオのスピーカーセッティングが行われているため、DVD Videoもこの規格に基づいて製作されている。
規格では5つのスピーカーを視聴者を取り囲む円上に配置するのだが、その理由は各スピーカーと視聴者との距離を均一にするためだ。
多くの人がやっているように、フロントへL、センター、Rの順で直線に並べて、真後ろや斜め後方あたりにリアスピーカーを置いただけではダメなのだ。
つまり「映画館のような音場再現」をホームシアターで実現するためには、この基準で5本のスピーカーをレイアウトするのがベストだということになるが、その配置はリスナーの位置を中心とした円上に配置されていなければならない。
たとえば日本での平均的な江戸間6畳位の部屋を例に挙げると、28型テレビを見ると仮定した場合、正しくセッティングしようとすると、ほとんどのスピーカーが部屋からはみだしてしまうことになる。
じゃあ円を小さくすればいいだろうと、自分が円の中心になるように近接してセッティングすると、自分のすぐ目の前に大画面テレビが迫るというレイアウトになってしまう。
さらに普通の部屋では、何らかの家具などが置いてあるだろうから、5つのスピーカーを理想的な位置へ配置することはまず無理だろう。
5.1chサラウンドはスピーカーからリスニングポジションまでの距離まで計算された上でデータ化されているため、スピーカーは配置は設計どおりに設置しないと音像バランスがくずれてしまうのだ。
スピーカーがたくさんあるのだから、置ける位置に適当に置けばいいと考えている人もいるだろうが、実はこうしてよく考えてみると、5.1chサラウンドというのは、かなり厳密さが要求されるシステムなのだ。
ビックカメラなどでデモをやっている、さまざまなホームシアターシステムは、本来映画を楽しむための専用のホームシアターがあって、正確に測定できる装置で調整することを前提にした製品なのだ。
私もそうだが、ホームシアターシステムを購入したいと考えるほとんどの人は、置くだけで気軽に楽しみたいと思っているわけで、スピーカー位置とそれによる音量差、時間差補正をしてまでホームシアターを導入しようと思ってはいないだろう。
ウチではカミサンがコード類がリビングを這い回ると嫌がることもあって、それなら2チャンネルで質のよい音で楽しんだほうがいいというわけで、この手のものへは手を出さなかったのだ。
だが、最近株式会社メカニカルリサーチからNIROという「フロントスピーカー1本で5chを再現する」という、にわかには信じ難い触れ込みの画期的なシステムが発売されたという。
この会社は高級テープデッキメーカー「ナカミチ」の創始者の弟で二代目社長、中道仁郎氏が起こした企業で、ホームシアター、オーディオ、カーオーディオなどを手がけ、2002年からは大手ゲーム機メーカーへの加工音源の提供を開始するなど、AV機器以外にも事業分野を広げているようだ。
往復の送料を負担するだけで14日間無料試聴できるというので、WEBを見ると、何種類かを選択することができる。
私のデスクのスピーカーは定価で1本8万以上するシステムだからトータルで16万円というレンジなので、ためらわずに、11万円強の価格帯の最上位機種 NIRO REFERENCE がいいだろうと申し込むことにした。
気に入らなければ返品できるのだからね。
で、先週の金曜日にセミナーが終わって帰宅したら、カミサンが「大きな箱が来たわよ」というので早速開梱してみる。
セットアップはとても簡単。
サテライトスピーカ1つとウーファー1つを小さなアンプに繋ぐだけ。
どちらもワンアクションでの接続が可能なコネクタを採用しているため、システム三点を繋ぐケーブル2本を、コネクターで繋ぐだけという、あっけないほど簡単な作業だ。
こうした類の作業が苦にならない人には、取説を見なくても5分もあれば終わる作業だろう。
薄型ディスプレイが薄いといってもこれくらいのサイズとスピーカーを上に乗せるだけの幅があるうえ重さも安定するだけのバランスが取れているため、センタースピーカー用のマウントアダプターがなくてもOKだった。
光デジタルケーブルは同梱されていなかったので、速攻でビックカメラでゲットし接続。
まず、2チャンネルのソース、Louis Van Dijk Trio / BALLADS IN BLUE を聞き比べると、NF-1A はさすがモニタースピーカーだけあって低音のスピード感やソリッドさなどの点で圧倒的に優れている。
NIRO REFERENCE だと、2チャンネルモードでも、どちらかというと響かせてまとめて聞かせるという傾向にあることがわかるが、スタジオモニタースピーカーと比べては分が悪いのは仕方ないところだ。
普通の基準では、かなりしっかりとしたサウンドだといっていいだろう。
だがDVDの映画となると評価は全く異なるのが面白いところで、エイリアンVSプレデターだと、NF-1A は2チャンネルなので、どうしても前後の広がりや臨場感のない、面白みのないサウンドに感じてしまう。
2チャンネルVS 5.1Chサラウンドでは、映画になると方式そのものからして分が悪い。
比較視聴する前は、結局はバーチャルだろうから大したことはないだろうとタカを括っていたが、視聴を始めると、なかなかのサウンド だ。
思わず映画に引き込まれてしまう。
エイリアンVSプレデターの冒頭部分では、微細な効果音が空間の広がりを感じさせてくれるうえ、爆発音などは、かなり細かな神経を使って収録されていることがよくわかって面白い。
もともと映画館というのは、建物の構造を考えるとわかるように、どちらかというと共鳴する傾向にあるから、そういう意味ではこうしたちょっと響きの多いシステムとはかなり相性がいいというか、音響の特性が近いといっていいだろう。
ウチは、大音量は平気なのでいつも大き目の音量で楽しんでいるが、思い切ってボリュームを上げると、まさに映画館。
ウーファーとのコンビネーションで、重低音から高音まで、バランスよくこれだけの迫力で聞かせてくれてこの値段なら、安い買い物だといっていいと思う。
壁からの反響音などを利用する仕組みではないため、部屋の形状や家具などの制約をあまり受けないということだが、それでも座る位置によって、センタースピーカーを動かすと、効果がかなり変わるのが面白い。
何といってもセンタースピーカーが一体になっているため、簡単に位置を動かすことができるから最適の位置を探すために気軽に移動する気が起きるのは、なかなかよい点だ。
今はセンタースピーカー用のマウントアダプターがないため、使い終わったら地震に備えて?下へおろしている。
オーディオに凝っていた頃は、スピーカの前後や上下の位置を年中変えては楽しんでいたが、それに比べればこれくらいの調整はとても簡単に思えるうえ、位置を動かした効果がはっきりわかるため、結構楽しみながら調整することができる。
音の良さと設置や操作の簡単さという要素のバランスを考えると、普通の家庭では、これだと十分過ぎるといって 差し支えないだろう。
というわけで、3日間じっくり聴いたうえで購入を決定。
大型プラズマディスプレイや液晶TVにもワンタッチで取り付け可能だというセンタースピーカー用のマウントアダプターも購入と同時に申し込むことにした。
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